★★☆☆☆
あらすじ
戦後まもなくの貧しい時代に育った男が、やがてヤクザとなり激動する日本を生き抜いていく。146分。
感想
ヤクザとなった男の一代記だ。主人公のまわりにたくさんの人物が現れては消えていくので、その人間関係を把握するのがなかなか難しい。しかもそれぞれの人物をキッチリと描くわけでもないのでなおさらだ。
個人的には少年時代の子役から大人の役者に切り替わった時に誰が誰だか分からなくなったのが痛かった。途中で、え、この人って主人公の実兄だったの?とようやく気づいて驚いてしまったくらいだ。
さらにはヤクザ映画特有の複雑な組同士の関係性もややこしくて、どことどこがどういう理由で抗争しているのかもよく分からなかった。皆のセリフが聞き取りづらく、何をやっているのかさえうまく理解できなくて、正直、何で主人公がそれなりの立場のヤクザになったのかが謎だった。ヤクザ映画を鑑賞する時にはよくあることだが、なんとなくの雰囲気でただ見ているしかなかった。
それから何と言っても主人公のミスキャスト感がすごい。決して演技が下手なわけではないのだが、なんで彼なの?という違和感がずっとあった。しかもなぜかサラサラヘアで、妙にカジュアルなファッションをしていることが多く、あまりヤクザらしさがない。彼のいつものスタイルでそのまま出ていたらさまになっていただろうに、それでは役作りをした気分が出なくて嫌だったのだろうか。確かにこういうヤクザもいるのだとは思うが、せめてもうちょっと寄せて欲しかった。
物語の中で、時代を象徴するような事件や世相を反映するような出来事にも触れられていて、主人公の生涯だけでなく、戦後日本の変わりゆく姿も同時に描こうとしていることがよく伝わてくる。ただあまりにもピンポイント的で、本人や関係者はそれでいいのだろうが、それ以外の人にはもっと詳しく説明してくれないとよく分からないよ、と思ってしまった。
おそらく主人公と同世代の人たちであれば、自身の人生と重ねて感慨に浸れるのだろうが、そうでない人たちだと、ただ長いだけのしんどい映画と感じてしまうかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 井筒和幸
出演 松本利夫/柳ゆり菜/中村達也/阿部亮平/和田聰宏/赤間麻里子/芦川誠/木下ほうか/三上寛/隆大介/升毅/小木茂光/ラサール石井