★★★☆☆
あらすじ
父ゼウスの反対を押し切って人間界にやって来たヘラクレスは、ニューヨークでの暮らしを満喫していたが、策略によって一時的に神的な能力を奪われてしまう。
アーノルド・シュワルツェネッガーのデビュー作。原題は「Hercules in New York」。
感想
人間界に興味を持ったヘラクレスが現代のニューヨークにやって来るストーリーだ。本人は人間界での生活を満喫しているが、やってることは傍から見ればかなりたちが悪い。俺は神だぞと金は払わないし、すぐに服を脱ぐし、暴れるしとかなり傍若無人だ。本人は全然悪意がないのだが、世襲議員が庶民の生活を視察に訪れて機嫌よく愉快に振る舞っただけのつもりだったのにメチャクチャ反感を買ってしまったようなものだろうか。無知や無邪気さが人を傷つけてしまうことは割とよくある話だ
そんな彼の神的な力を奪ってしまうのは上手い設定だった。ただ彼は神的な力がなくなったとしても常人離れした筋肉は持っているわけで、見た目なりの力はまだ残っている。怪力自慢の人間と互角の勝負をしてギリ負ける程度の能力はあるので、分かりづらいわ、とツッコみたくなってしまった。そこはもっと分かりやすく弱くなってくれても良かった気もする。
コメディだが、古い映画なので今だとそんなに笑える箇所はない。それでも、チープな着ぐるみのクマと真剣な顔で格闘するシーンは茶番な感じが面白かったし、ニューヨークの街を戦闘馬車で駆け抜けるシーンは馬鹿馬鹿しさがあってつい笑ってしまった。全体的にくだらなさがあって悪くない。
この映画はアーノルド・シュワルツェネッガーのデビュー作だが、言葉の訛りの問題もあってセリフは少なく、演技もへたくそで馬鹿っぽさが滲み出ている。でも不思議と愛嬌はあるのでスターの素質を感じなくもない。演技や言葉の問題はある程度努力次第で何とかなるものなので、やっぱり重要なのはキャラクターだなと再認識させられた。
能力を奪われた主人公は窮地に陥るが、オリンポスから送られた援軍によって何とか難を逃れる。そして、父ゼウスに対する反抗を反省して帰っていくのだが、これらも下層階級の暮らしを興味本位で見に来たが、やっぱ父親らのいる上流階級の方がいいわ、とサラッと戻っていくお坊ちゃんムーヴぽかった。
一応、親しくしてくれた友人に別れの言葉を残してはいるもののどこかおざなりで、能力を失い人間と同等の立場になったことで何か学びはなかったのか?とか、威勢のいいこと言って結局、体制に従順になっただけだが恥ずかしくないのか?とか思わなくもないのだが、神はそんなことは気にしないということなのか。人間ではないから当然なのだが、その浮世離れした感覚が面白いと言えば面白い。
身勝手な行動を取るヘラクレスを、マーキュリーやネメシスといったオリンポスの神々がそれぞれ怒ったり、擁護したり、陥れようとしたりしているのだが、ギリシャ神話のキャラのことをよく知っていたら、あいつならそんなことを言いそう、等と思ってきっともっと楽しめるのだろう。ギリシャ神話を題材にしたものは映画に限らず色々あるので、ちゃんと知識として持っておきたいなと興味が湧いてきた。
スタッフ/キャスト
監督 アーサー・アラン・シーデルマン
出演 *アーノルド・シュワルツェネッガー/アーノルド・スタング/デボラ・ルーミス/ジェームズ・カレン
*アーノルド・ストロング名義
アーノルド・シュワルツェネッガーのSF超人ヘラクレス - Wikipedia