★★★★☆
あらすじ
高度な文明を持ちながらその存在を世界に秘匿するアフリカのワカンダ国。新たな国王となり、超人的な能力を持つブラックパンサーとなった主人公は、国の本当の姿を世界に知らしめようと目論む男に、王座をかけた戦いを挑まれる。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)シリーズ第18作品目。
感想
まず最初に映画の前提となる世界観を短い時間で分かりやすく説明してくれるので、すんなりと映画に入っていける。最近の映画は本題に入るまでの紹介的な演出が抜群に上手くなった。特にエンタメ系の映画が顕著だが、このあたりはCG技術の発展が大きく寄与していると言えるだろう
序盤は主人公が、アフリカの小国だが実は高度な文明国家、ワカンダ国の王になる儀式が描かれていく。だがこの儀式がテレビなどで見たことがあるような未開の地の部族がやりがちなものだったので、少々だるく感じてしまった。ただこの儀式の内容は、追々さまざまな伏線として効いてくるので、必要な描写だったことが段々わかって来るのだが。
晴れて国王となり、これまでの伝統を引き継いでいこうとする主人公の前に、王座を奪い、改革を行なおうとするヴィラン(敵役)が現れる。隠している高度な文明を公のものとし、世界で虐げられているアフリカの同胞たちを救おうと訴えるヴィランの主張は肯けるものがあり、彼がヴィランではなくヒーローとして描かれる物語だったとしても不思議はないかもしれない。単純な勧善懲悪の構図にしなかったことで、物語に深みが出ている。ただこのヴィランがたくさん人を殺してきた事を誇るのは、よく意味が分からなかったが。
やがて主人公側と敵側に国が二分し、争いが行われるようになる。良き理解者と思っていた男が敵側に回ったり、反感を抱いていそうな男が味方に付いたりと意外な動きが見られ、人間の複雑さが良く表れていて興味深い。期待し過ぎると叶わなかったときは裏切られたように感じるし、不満を口にしていても信念に合致する事であれば協力したくなるものだ。人を動かすのは難しい。
この争いは、単純なヒーロー対ヴィランの戦いではなく、一種の内乱状態として戦争的に描かれていく。部隊同士の戦いやスターウォーズのような戦闘機同士の戦いなども見られるので面白い。かつての一般的な映画だったら、ただ一人出演の黒人役者がやっていたであろう役割を、唯一の白人であるCIA調査官が担っているのもニクい演出だった。
主人公とヴィランの直接対決自体はいまいち盛り上がりに欠けたような気がするが、ヴィランが単純な極悪人とは言い切れないので仕方がない。彼の考え方は悪くなかったが、やり方を間違えた。彼を見ていると、恵まれない環境に育った者は心に余裕がなく、無茶をやりがちかもしれないなと思ったりした。
アフリカを舞台にしているが、これまでのアフリカ映画らしくない映画なので、なかなか新鮮で楽しめた。このやり方だと、ステレオタイプに描いてしまいがちな欧米にとって縁遠いアジアなどの地域も、違った角度から描くことができるので面白いかもしれない。色んな地域のこのパターンの映画を見てみたいと思ったが、もう既にやっているのだろうか?
スタッフ/キャスト
監督 ライアン・クーグラー
脚本 ジョー・ロバート・コール
出演 チャドウィック・ボーズマン/マイケル・B・ジョーダン/ルピタ・ニョンゴ/ダナイ・グリラ/マーティン・フリーマン/ダニエル・カルーヤ/レティーシャ・ライト/ウィンストン・デューク/アンジェラ・バセット/フォレスト・ウィテカー/アンディ・サーキス/セバスチャン・スタン/スターリング・K・ブラウン/スタン・リー
音楽 ルドウィグ・ゴランソン
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