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「月曜日のユカ」 1964

月曜日のユカ

★★★☆☆

 

あらすじ

 男を喜ばせることに生きがいを感じる愛人業の若い女は、ある日街でパトロンが家族と幸福そうに過ごすのを目撃して嫉妬を覚える。

 

感想

 主人公を演じる加賀まりこの魅力が溢れる映画だ。彼女が見せる表情や仕草に惹きつけられる。彼女の存在がこの映画の推進力となっている。今見ても全然いけているファッションも良い。ひときわ感じる顔の小ささが、彼女を特別な存在にしているような気がした。

 

 主人公は年配の男をパトロンに持つ、愛人業をして暮らす若い女だ。ただ、金のためにと割り切っているのではなく、男を喜ばせることに喜びを感じるような純粋さを持っている。とはいえ米兵相手に同じようなことをしていた母親と、愛人業について語り合う姿には色々と考えさせられてしまうものがあった。ただそこでの議論も、どうしたら男を喜ばせることができるか?というものなのだが。

 

 そんな主人公が町で家族と過ごすパトロンを目撃し、自分には見せたことがない嬉しそうな表情をしていたことに嫉妬したことがきっかけとなって、物語が動き出す。不倫だとよくある出来事なのかもしれないが、彼女の場合はそんな風にパトロンを喜ばせることができないのが悔しい、というなかなかファンタジー感が溢れるいじらしい理由からの嫉妬だ。

 

 

 他愛もないストーリーと言えばストーリーなのだが、それを印象的な構図や撮影技術で魅せるものにしている。途中でチャップリンの喜劇風の映像になったり、画面いっぱいに花びらが舞ったりと色々と工夫が施されているが、中でもホテルのラウンジで人々が静止する中、カメラだけがグッと動き出すシーンが面白かった。

 

 前衛的に思えるシーンもいくつかあり、たまに妙にたっぷりと間を取る場面が出てくる。ステージ後の奇術師の男が楽屋で舞台化粧を落とし、衣装から私服に着替えて出ていくまでの一連の動きが延々と映し出されるシーンには、何を見せたいのだろうと困惑してしまった。主人公のそれなら理解できたのだが。

 

 ラストは想像もしていなかった展開が待ち受けていて驚かされた。今まで夢中だったものに突然一瞬で冷めてしまった主人公に、小悪魔感が漂い始める。色々尽くして喜んでもらおうとするのではく、自分が喜んでいる姿を見て喜んでくれるような関係がきっと正常なのだろう。無邪気に見えた主人公の心の奥に潜む闇が、垣間見えたような気がした。

 

スタッフ/キャスト

監督 中平康

 

脚本 斎藤耕一/倉本聰

 

出演 加賀まりこ/北林谷栄/中尾彬/加藤武/波多野憲/ウィリアム・バッソン/ハロルド・コンウェイ/梅野泰靖/日野道夫/フランク・スミス/榎木兵衛/堺美紀子/谷隼人/山本陽子

 

音楽 黛敏郎

 

撮影 山崎善弘

 

月曜日のユカ

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