★★★★☆
あらすじ
母親の元を離れ父親と暮らすことになった少年と、近所の仲間たちとの物語。
感想
麻薬や発砲は日常茶飯事で、死体を見ることも珍しくない黒人社会での暮らしが描かれる。幼い子供たちがそんな日常に慣れてしまっていてることに恐ろしさを感じる。そして、そんな彼らが高校生になった頃には、当然のようにほとんどがギャングになってしまっている事の悲しさ。その間に何があったかは語られないが、現在の彼らの姿を見れば多くを察してしまう。
そんな中で、まともに成長した主人公とその友人。友人は既に子供がいたりはするのだが、アメフトの選手として大学から誘われるほどの活躍を見せている。これは少年時代のアメフトのボールをめぐるちょっとした事件が関連していて、それがもし別の結末だったなら、彼の現在はまた違ったものになっていたかもしれない。さらに彼の兄やその友人たちもギャングにはなっていなかったのかもしれない。そう考えると、彼らはそんな些細なきっかけで人生が変わってしまうような、紙一重の危うい生活を送っている。
一方の主人公の場合は、間違いなく父親の存在が大きいだろう。黒人同士が殺し合っている現実に目を向け、そこに息子が巻き込まれないように厳しく教え込んでいる。立派な人物だ。ただ、問題に気付いている父親がなぜそんな黒人コミュニティーに居続けるのだと疑問に思わなくはないが、距離をとるのではなく同胞として地域を共に良くしていこうと考えているからだろうか。
大学進学に向けて順調な主人公とその友人だったが、定期的に挿入されるヘリコプターの音が不吉の予兆のように感じられて、嫌な予感しかなかった。そのうち別のグループとちょっとしたいざこざが起きたり、警官に痛めつけられたりと不穏な空気が順調に醸成されてしまい、そして案の定、悲劇が待ち構えていた。
その悲劇に巻き込まれそうになった主人公は、すんでの所で自らの意志で難を逃れることが出来た。とはいえ安堵したというよりは、まっとうに生きようとしているのにそれでも飲み込まれそうになるなんて、なんてハードモードなんだ、と暗鬱とした気分になってしまった。
今はだいぶ数多く見られるようになったが、こういった黒人の黒人による黒人のための映画、というのは、彼らの現実を世に知らしめるという意味で、公開当時のアメリカにおいてとても意義のあるものだったのだろうなと想像できる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ジョン・シングルトン
出演 キューバ・グッディング・ジュニア/モリス・チェストナット/アイス・キューブ/ニア・ロング/ラリー・フィッシュバーン/アンジェラ・バセット/ティラ・フェレル/デジ・アーネス・ハインズ2世
音楽 スタンリー・クラーク
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