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「捨てがたき人々」 2014

捨てがたき人々 [DVD] 

★★★★☆

 

あらすじ

 生きることに飽き、生まれ故郷の五島列島に戻って、持ち金がなくなるまで無為に暮らそうとする男。

 

感想

 主人公の周りの登場人物たちはほとんどが中年以上なのだが、男女の関係に皆が夢中になっている。娯楽の少ない田舎ならではと言えるのかもしれないが、舞台となっている五島列島はイメージダウンになってるのでは、と妙に心配してしまった。ただ、複雑に見える現代でも、いろいろなものを取っ払って眺めてみれば、人が生きるという事は結局はこういう事なのかもしれない。

 

 生きているのに飽きたと言ってみせる主人公も、そんな事には同じように貪欲だ。若い女を強引に襲い、ただ欲望のままに生きている。自分を卑下しながらもどこかにやけくそな反発心も隠し持っているそんな主人公を、短い髪に無精ひげ、作業着という風貌、ぎょろりとした視線で大森南朋が存在感抜群に演じている。

 

 

 そして一方の女。新興宗教の熱心な信者で、いつも笑顔を絶やさない。自分を襲った主人公にも寛大な心で接する。なのに、男を作って夢中になっている中年となった母親に対しては口汚く罵ったりしてギョッとしてしまう。しかも、その内容が上の口がどうだとか、あまりの下劣さに思わず苦笑。宗教の教えは大事だが、それとこれは話が別という事なのだろう。欺瞞ではあるのだが、宗教に利用されるのではなく、上手く宗教を利用している感じがして、賢いなと感じてしまった。

 

 そんな女と関係することで、投げやりだった主人公にも変化が生まれる。とはいえ、聖人君子になったわけではなく、他の女性に手を出したり、勤めていた会社を脅したりと、相変わらずな部分がかなり残っているのがリアルだ。

 

 人間はどんなに取り繕った所で結局は欲望に大きな影響を受けていて、その欲望によって子供が出来たりと何らかの結果が現れ、ふと我に返る。そして思い悩むのだが、しばらくすればまたいつもの欲望に突き動かされている。生きるとはそれを何度も繰り返していくという事なのかもしれない。映画の中でも少し触れているが、煩悩や業(カルマ)といった仏教的な要素も込められているように感じられた。

 

 若干長く感じる部分もあったが、意外と豪華な役者陣が皆いい演技を見せていて、見ごたえがあった。田口トモロヲが口から蟹を出すシーンは流石だな、とニヤリとしてしまった。エンドクレジットと共に流れる榊いずみの「蜘蛛の糸」が沁みる。

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スタッフ/キャスト

監督/製作 榊英雄

 

脚本/製作 秋山命

 

原作 捨てがたき人々(上) (幻冬舎文庫)


出演 大森南朋/三輪ひとみ/内田慈/滝藤賢一/佐藤蛾次郎/諏訪太朗/寺島進/荒戸源次郎/美保純/田口トモロヲ

 

音楽 榊いずみ

 

捨てがたき人々 - Wikipedia

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