★★★☆☆
あらすじ
裏社会でのし上がっていくギャングの主人公と、彼を逮捕しようと捜査する警察。
感想
冒頭のアディダスのスニーカーやジャージ、金のネックレスやリング、カンゴールのハットといった、いかにもな登場人物たちのストリートファッションに最初は時代を感じたが、次第に慣れてきて今でもいけそうな気がしてきた。ブルーノ・マーズもやっていることだし、一周回って今、ちょうどよいのかもしれない。確か、オーバーサイズの服も今、流行っているらしいし。音楽も含めてそういうあの時代のカルチャーも楽しめる映画。
犯罪が蔓延し、警察ですら介入しようとしない貧しい地域。そこから薬物を売って裏社会でのし上がっていく男。いわゆる成り上がりの物語だが、この手の話は一定の人気が常にある。どんなにどん底にいても、自分にも可能性があるのかも、と希望を持たせてくれるからかもしれない。映画の中の彼らもアル・パチーノの「スカーフェイス」を見ていた。
日本だと今は公務員になるのが夢、みたいなところがあるから、そういう成り上がりの心意気はないのかも、と思ったが、よく考えてみればユーチューバー的なものがそれにあたるのかもしれない。まだ成功してもいないのに、なんなら何も始めてすらいないのに、すっかりそっち側の人間になったつもりで発言したり。ただこのギャングの世界と同様に、多くの人間は脱落していくわけだが、まぁ勘違いできるのは若者の特権ともいえる。
この映画は薬物の蔓延をテーマにしているからか、ギャングたちが殺しあったりする場面は普通のテンションなのに、薬物使用のシーンになると急にシリアスなトーンになるのが意外な感じがした。今だとそのあたりも軽いノリで描かれる映画のほうが多い。でも、確かにこの描き方のほうが、クスリ駄目、絶対、感は出ている。
薬物中毒から立ち直った若者が、誘惑に耐え切れずまたクスリに手を出して破滅してしまう場面は、薬物の怖さがよく表れていた。ただクスリを絶ったのなら、その器具とかも処分しておけよ、とも思ったが。
ギャングたちは一方では、地域の人間に食事を配ったり、子供たちにお金をあげたりプレゼントしたりもしている。ちゃんとコミュニティを大事にしようとするマインドには感心するが、よく考えれば彼らに薬物を売ったお金でやっていることだし、自分たちに尊敬を集めるための手段でもあるし、彼らに憧れて仲間になろうとする子供たちを増やすことにもなり、プラスマイナスで考えたらきっと良い事ではない。だけど、表面的なところだけを見て彼らを美化する人間たちもきっといるはずだ。
成りあがっていったウェズリー・スナイプス演じる主人公も、やがてはサクセス物語の終焉がやってくる。成り上がりの物語は勝者は少なく、脱落者は山ほどいるのが難点で非常にバランスが悪い。大きな目で見れば主人公ですらも脱落者という事になる。それだけ成功すればデカいという事になるが。
誰が見ても明らかなほど、薬物をさばいて成り上がった主人公を、なかなか罪には問えないとなると、そりゃ薬物は蔓延するわ、とは思った。
スタッフ/キャスト
監督/出演 マリオ・ヴァン・ピーブルズ
出演 ウェズリー・スナイプス/アイス-T/ジャド・ネルソン/クリス・ロック/ビル・ナン/マイケル・ミシェル/ラッセル・ウォン/ビル・コッブス/キース・スウェット/テディー・ライリー/アーロン・ホール/ダミオン・ホール
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