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「チャプター27」 2007

チャプター27(字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 ジョン・レノンを殺した男、マーク・チャップマンの犯行までの3日間が描かれる。85分。

マーク・チャップマン - Wikipedia

 

感想

 ジョン・レノンが殺されたニューヨークのダコタハウス前を中心に、犯人の犯行までの3日間が描かれる。まず、ジョン・レノンに一目会いたいと集まる人たちが、案外気軽なノリだったのが意外だった。もっと思い詰めた表情で朝も夜もひたすら粘り強く待っているのかと思ったが、途中で映画に行ったり、お茶したりしているし、夜が来れば皆帰ってしまう。ハリウッドの有名人の豪邸を見に行くようなもので、会えたらラッキー、くらいの娯楽感覚だったのだろう。これぐらいなら、ジョン・レノン側がそんなに神経質にならなかったのも頷ける。

 

 そんな人たちに交じって、ジョン・レノンを待ち続ける主人公。ここでの彼は少し異質な雰囲気を醸し出してはいるが、それでも周囲の人たちに気軽に話しかけたりして、テンションの上がったお上りさん風は否めない。

 

 

 ただ、その場を離れて1人になると、彼の頭の中では様々な声が駆け巡り、彼を追い詰めていく。ダコタハウスの前でも、誰かと話しているとき以外は同様だ。そして日を重ねるにつれて、頭の中で散らばっていた様々な思考は、どんどんと一つの方向にまとまっていく。映画ではそんな自問する主人公の姿が淡々と描かれ続け、終始重苦しい雰囲気。かなり一本調子になってしまっており、短い映画なのにとても長く感じてしまうほどだった。こんな気分でずっといるから主人公は犯行に及んだのだ、という事なのかもしれないが、映画としてはもうちょっと息が抜けるシーンが欲しかった。

 

 よく分からない変な奴、といった印象の主人公だったが、唯一、ジョン・レノンにサインをもらった時のリアクションだけは共感できた。無邪気に喜び、これで何かが変わるかもしれないと浮かれている。ただそれもひとときだけで、興奮が冷めてしまえば結局何も変わらない現実に気づき始める。相変わらず周囲の人間は冷たい目で見てくるし、自分から離れていく。まだ残る興奮と気落ちした気分がないまぜになったまま、ついに主人公は計画を実行する。

 

 でもこれは運のようなもので、揺れる彼の気持ちが決行に傾いた時にジョン・レノンが現れてしまったから、事件は起きた。もしタイミングが違っていれば、彼は今頃、ハワイで孫に囲まれながらサインの書かれたアルバムを自慢していたかもしれない。そう考えると人生なんてちょっとした運に左右されてしまう儚いものだなと、しみじみしてしまう。ただ、ジョン・レノンについて言えば、たとえ主人公が決行しなかったとしても、彼と似たような人間は世界中にたくさんいただろうから、遅かれ早かれ殺されてしまったのかも、と思わなくもない。

 

 途中で主人公が、リンジー・ローハン演じるジョンのファンにマインドセットの重要性を説いていたが、彼はそれを悪い方向に使ってしまったのだなと悲しくなった。マインドセットはこうやって自分を悪い方向に導いてしまったり、他人に悪用されたりすることもある。だから本当はマインドセットの前に、人生は素晴らしい、それを無駄にしてしまう事ほど空しいことはない、という大前提の心構えが必要なのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 J.P.シェファー

 

製作総指揮/出演 ジャレッド・レト

 

出演 リンジー・ローハン/ジュダ・フリードランダー/マーク・リンゼイ・チャップマン

 

チャプター27(字幕版)

チャプター27(字幕版)

  • ジャレッド・レトー
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チャプター27 - Wikipedia

チャプター27 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

登場する作品

ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)

 

 

登場する人物

マーク・チャップマン/ジョン・レノン/オノ・ヨーコ

 

 

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