★★★☆☆
あらすじ
目の前で息子が車が連れ去られ、追走する母親。
感想
子供を誘拐された母親が、息子を乗せた誘拐犯の車を追走するストーリー。まず観ていて思ったのは、今だとスマホさえあれば車中からでも警察に通報できるし、犯人の写真や動画も撮れてしまうし、SNSで皆に協力を求めることすら出来てしまうので、本当ならこんな事件は簡単に解決してしまうのだろうなという事。となると、この映画ではうまくやれていたと思うが、面白くするためにはいかに物語から自然な形でスマホを排除するかが重要になってくる。そう考えると、このなんでも事をスムーズに運んでしまうスマホというものは、ドラマを生む物語を作る人間にとってはなかなか厄介な存在なのかもしれない。何をするにもまず、スマホの扱いをどうするのかを考える必要がある。
映画のほとんどはハル・ベリー演じる主人公が、ただただ誘拐犯を追走するというシンプルなプロット。マンネリにならないように工夫を凝らしていることはちゃんと伝わってくるのだが、それらがどうにも納得が出来ないものが多い。主人公がついて来ると息子に危害を加えるぞと警告されたにもかかわらず、一瞬追走を止めただけですぐに再開してしまうのはマズくない?とか、犯人の車を何度か見失ったのにその度に必ず再び見つけ出せてしまうなんて奇跡すぎるだろうとか。主人公の行動で納得感があったのは、犯人をひき殺そうとした時くらいかもしれない。
犯人側も、なんで追われていることに気付いているのに追われるままにしておくのかとか、主人公を始末しようとした時もなんですぐに実行しないでしばらく泳がせ、わざわざ危険な状況になってからやろうとしたのかとか、不可解な事ばかり。まさか追って来るなんて想定外だったのだとは思うが、それにしてももうちょっと色々やりようがあったのではと思ってしまった。
そんな感じで物語が進むにつれてどんどんとモヤモヤが溜まっていく映画。ラストのこれで一件落着と安心させてからのもうひと盛り上がりの展開も、なんだかあざとく感じて興醒めしてしまった。ただ、すぐに事件が起こってそのままノンストップでエンディングまで向かう勢いのある流れは悪くないので、モヤモヤさせることなく上手くやってくれたら、かなり満足感はあったような気がする。
それから振り返ってみると、あのうんざりとした気分にさせられるオープニングのレストランのシーンは何の意味があったのだ?と思ってしまった。イライラするような状況の中でも辛抱強く仕事をする主人公の姿を見せて、彼女の忍耐強さを示そうとしたのだろうか。だとしてもあまり必然性は感じられないのだが。
スタッフ/キャスト
監督 ルイス・プリエト
製作/出演 ハル・ベリー
出演 セイジ・コレア/クリス・マクギン/リュー・テンプル