★★★★☆
あらすじ
浮気した妻の殺害を目論むも、抵抗した妻が逆に実行犯を殺してしまい慌てる男。原題は「Dial M for Murder」。
感想
冒頭の短い間に、ヒロイン役のグレース・ケリーが別の男を相手にする長いキスシーンが2度ある。彼女が浮気をしていることを端的に示すためのシーンだが、これが妙に生々しい。変にムードを作らず、唐突に行われているからだろうか。そういう現場に居合わせてしまったような、気まずい気分を味わわされる。
浮気された主人公が妻を殺そうと画策し、まずはある男を脅して実行犯として協力させようとする。殺すことに何のためらいも感じていなさそうな主人公と、あっさりと簡単に引き受けてしまった実行犯に少し引っ掛かりを感じてしまったが、そこはサスペンスなので気にしてはいけないところなのだろう。事前に殺害計画のあらましが披露される。
だがいざ決行となると予定外の事ばかりが起きて目論見通りにはならず、逆に実行犯が死んでしまう。この展開に、計画通りに進む事なんてまずない、とちゃんと前振りがあった事を思い出し、思わずニヤリとしてしまった。だがここで主人公がただ慌てて計画の痕跡を消そうとするだけでなく、妻を殺人犯に仕立てようとしたのがすごい。あまりの切り替えの早さに最初はその意図に気付かず、しばらく主人公が何をしているのかがよく分からなかった。
計画はもろくも崩れてしまったが、なんとか目的は果たせそうだと安堵している主人公を前に、ヒロインを何とか助けたい浮気相手の男が、崩れた計画を見事に組み立て直し、披露してみせるシーンは面白かった。主人公は、自ら考えだした計画を提示され、困惑させられることになる。
やや入り組んだ状況ではあるのだが、何とかついて行ける程度の複雑さで、ちゃんとすべてを把握した上でクライマックスに臨むことが出来た。主人公の行動を注視するラストは緊張感があり、ぐっと集中力が高まる。そして安堵感が訪れる展開はカタルシスがあった。主人公のリアリティのある細かい動きも楽しませてくれる。
そういえば密室劇だったなと見終わってから気付くような、そのデメリットを感じさせない、見ごたえのあるサスペンス劇だ。
スタッフ/キャスト
監督/製作/出演
出演
レイ・ミランド/ロバート・カミングス/ジョン・ウィリアムズ/アンソニー・ドーソン
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