★★☆☆☆
あらすじ
かつてアフリカでゴリラに育てられ、現在はイギリスで貴族として暮らす男・ターザンは、ある男からアフリカ・コンゴに招待される。
感想
英国で暮らしていたターザンがアフリカに戻る物語だ。皆が知っているいわゆるターザン物語のその後を描いている。だが改めて考えてみると、ターザンは知っているが元々は何なのか、どんな物語なのか、そもそもよく知らないことに気付く。調べるとどうやら小説が最初でその後映像化されて人気を博したようだが、キャラだけが独り歩きして知名度が高いのはすごいことだ。フランケンシュタインやシンドバッドなどと同じで世界的なキャラクターということだろう。
おそらく自分は、それら一連の作品ではなく、その後に山ほど作られたであろうパロディやオマージュの中の何かからターザンを知ったはずだ。ただ最近はターザンをモチーフにしたものをあまり見なくなってきたような気がするので、もしかしたら今の小中学生には「ターザン」と言っても通じないのかもしれない。この映画にしても、何で今さらターザン?みたいな印象はある。
イギリスで貴族として暮らしていたターザンがアフリカ・コンゴである陰謀に巻き込まれ、野生を取り戻しながら戦う姿が描かれる。それと同時に、ターザンのターザンたる由縁であるその生い立ちも合間に紹介されながら進行するので、ターザンをよく知らない人にも一応は大丈夫なようになっている。
ただその紹介が終わるまでは、そもそもターザンってどんな話だっけ?よく知らないけど大丈夫なのだろうか?と不安なままで、なんだか集中できないフワフワとした気分のままで見ることになってしまった。変な工夫をせず、最初に素直にがっつりとターザンの生い立ちを紹介してくれた方が落ち着いて見られて良かったような気がする。
ターザンは敵に妻を連れ去られてしまい、奪還するために彼らを追うことになる。追いついては突き放されの手に汗握る一進一退の攻防戦になるのかと思いきや、そんなことはなく、ただ彼らに追いつくまでの道のりがダラダラと描かれるだけだった。妻を奪われたというのに悲壮感も切迫感もなく、ジャングルのルールを得意げに語ってのんびり進む姿にはイライラさせられた。まるで道草でもしているかのようだ。きっと観客のほうが心配で焦っている。
そしてターザンと言えば動物を味方に共に行動するイメージがあるが、積極的に絡もうとする様子もなく、途中で邪魔されたりもしていて、あまりそんな感じはしなかった。主人公がゴリラと戦うのもそうだが、ヒロインもカバの襲撃から逃げたり、ゴリラに行く手を阻まれたりしており、ターザン陣営がうまく動物とコラボできていない印象だ。ターザン映画なのにあまりターザンが地の利を活かしているようには見えず、心躍るものがない。
しかも主人公は敵と戦う前に動物や現地部族とも戦っているので、誰のために誰と戦っているのかが非常に分かりづらい。ターザンの立ち位置がブレブレで曖昧になってしまっている。
ついに追いついた敵との対決がクライマックスだ。だが敵と直接対峙するのは最初と最後の2回だけなので、両者の間に感情移入したくなるほどの因縁は感じられず、全然気分が盛り上がらなかった。最後に動物が大集合するのも取ってつけたようだったし、戦いの後に現地部族が一同に揃って雄叫びをあげるのも白々しかった。特に現地部族の件に関しては「そもそもお前ら何もしてないやんけ!」となぜか関西弁で突っ込みたくなるほどで、とにかく全体的にグダグダな映画だった。妙に雄弁な音楽もうるさかった。
良いキャストが揃っていたのに勿体ない。
スタッフ/キャスト
監督/製作総指揮 デヴィッド・イェーツ
脚本/原案 アダム・コザッド/クレイグ・ブリュワー
原作 類猿人ターザン (ハヤカワ文庫 SF ハ 10-1 TARZAN BOOKS)
出演 アレクサンダー・スカルスガルド/マーゴット・ロビー/ジャイモン・フンスー/ジム・ブロードベント/クリストフ・ヴァルツ
音楽 ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ