★★★★☆
あらすじ
暴力団員が殺される事件が連続して起き、大掛かりな捜査が行われている中で、主人公はある人物を追って単独行動で捜査を進める。テレビドラマの劇場版。
感想
テレビドラマを見ていなかったので、必要以上に登場人物が出てくるように感じてしまう映画だ。それぞれのキャラクターや関係性も分からず、戸惑いがないわけではないが、組織とはこういうものだと思えばそんなに気にならない。
次々現れる人物たちの言動を注意深く観察し、彼らの組織におけるポジションを類推していると、まるで自分が組織に最近加わった新人のような気持ちになってくる。狙ってやっているのかは分からないが、案外それもまた面白くて悪くない。ドラマを見ていなくても困ることなく見ることが出来る。
暴力団員が連続して殺された事件を追うストーリーだ。暴力団の内部抗争を匂わすために、大沢たかおや鶴見慎吾、石橋蓮司らが演じるヤクザ同士のいざこざが少しだけ描かれるのだが、これが緊張感があってなかなか見応えがある。そのままやくざ映画にしてしまっても面白くなりそうで、わずかしか描かないのはなんだかもったいなく感じてしまった。
本編のストーリーも悪くない。捜査の途中でたまたま知り合ったヤクザの男と主人公の不思議な関係性が中心に描かれて、先が読めない展開で惹きつけられる。終始雨を降らせている演出にもこだわりが感じられた。
ただ主人公がずっと単独行動を取っていたのに、終盤に彼女の元に部下たちが急に集結し、突然チームとしての一体感を強調しだしたのには若干冷めてしまった。別にそのまま孤高の存在でいてくれればいいのにと思ってしまったが、それは自分がドラマを見ておらず、彼らとの関係性を知らないからなのだろう。ドラマを見ていれば、これは熱い展開だったのかもしれない。
最後は警察の不都合な真実をさらけ出して物語は終わる。王道すぎる展開に少し萎えてしまったのは事実だが、逆にありなのかもと後で考え直した。今は皆が公明正大なふりすらしようとしなくなったモラルハザードが起きている世の中だ。何かというと本音をぶっちゃけようとする。こんな時代には、正論を振りかざすことを茶化すのはもはやダサくて、真正面から正義を描いた方が人の心に響くような気がしてきた。今はそちらの方がクールなのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 佐藤祐市
製作 亀山千広/細野義朗/市川南/山田良明/高橋基陽
出演 竹内結子/西島秀俊
小出恵介/宇梶剛士/丸山隆平/渡辺いっけい/遠藤憲一/髙嶋政宏/武田鉄矢/染谷将太/金子賢/田中要次/金子ノブアキ/伊吹吾郎/鶴見辰吾/石橋蓮司/今井雅之/柴俊夫/田中哲司