★★★☆☆
あらすじ
田舎から首都キングストンにやって来た若者は、ミュージシャンを目指すもやがては大麻の密売に関わるようになっていく。ジャマイカ映画。
ちなみにこの映画のサントラは、世界にレゲエを広めたレコードとして有名。
感想
冒頭は主人公を乗せて都会に向かうバスのシーンから始まる。だが、細い山道を走るバスのカーブでの傾き具合がヤバくて冷や冷やしてしまった。それ以外にも興味深い光景がたくさん映し出されて、あまり知ることのないジャマイカの日常の雰囲気が感じられ、それだけで十分興味深かった。英語のようで英語でないジャマイカ・クレオール語(パトワ語)も面白い。
田舎から歌手を夢見て都会に出てきた青年が主人公だ。最初は簡単に騙されてしまったりして田舎の素朴な青年かと思っていたのに、教会で仕事を貰ったのにサボってばかりだったり、牧師が大事に育てていた孤児の女性に手を出したりと、かなりいい加減な男だった。ただこの辺りはジャマイカの国民性が影響しているのかもしれない。これだけではどれくらい彼が普通じゃないのかはよく判断できない。
主人公が歌手になるために奮闘する様子が描かれていくのか思ったら、あっさりとレコードデビューしてしまったのは、なんとなくジャマイカらしさがあった。だが物語はここからが本番で、あこぎなレコード契約を結ばされてしまった主人公は、やがて大麻の密売に手を染めていく。
登場人物のひとりが「この街の産業は音楽と大麻しかない」と言っていたのはなかなか衝撃的だったが、音楽で食えないとなったら大麻に関わるようになるのは必然なのか。だが主人公は自分の取り分に文句を言って仲間に疎まれ、警察に売られて抵抗したことにより追われるようになっていく。
これら一連の主人公の行動は、正直言ってあまり共感できなかった。もっと金をよこせと要求するのは単なる欲の皮が突っ張った子供じみたわがままに見えるし、逃げるために警官を何人も撃ち殺すのは非道すぎる。そもそも主人公がその前に起こした、自転車を盗られたくらいで相手の顔をナイフで切り刻んだ事件の時点でだいぶ引いてしまった。
だが映画のタイトルにもなっている主人公のデビュー曲「The Harder They Come」の歌詞を見ると、搾取されることを拒否する反権力のメッセージが色濃く感じられる。不利なレコード契約に抵抗して見せたりと、主人公の言動を見てもそれが意識的であることが分かる。それらを考慮すると、主人公のやっていることも理解できないではない。本能のままにやりたい放題やっているのと、意識的にやっているのでは随分とイメージが変わってくる。
主人公の主張は、ヒップホップの世界で聞かれるものと共通するものがあり、だからこそ彼は大衆の支持を得たのだろう。いわゆるアンチヒーローだ。アメリカン・ニューシネマ的な匂いのする作品で、ラストもそれらと似たような、何とも言えない寂しさを感じさせる結末になっている。だがこのビターな後味は嫌いじゃない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ペリー・ヘンゼル
出演/音楽 ジミー・クリフ
出演 ジャネット・バートレー/カール・ブラッドショー/ラス・ダニエル・ハートマン/ボビー・チャールストン/ウィンストン・ストナ/プリンス・バスター/ドン・ドッピング
登場する作品
この作品が登場する作品