★★★☆☆
あらすじ
不倫の末、互いに連絡を取らない誓約書を作成して別れた二人は、ひょんなことがきっかけで再度頻繁に会うようになる。人気ドラマの続編。
感想
全然ドラマは見ていなかったのだが、それでも主演の二人が激しい不倫をしていたらしいという前知識があったので、あまり問題を感じることなく観ることが出来た。ただ10年、20年と経って、話題のテレビドラマの続編と知らずに観た場合はどう感じるのかは分からない。物語としては成立しているが、二人がどんな不倫をしていたかを描かないと説得力がない、とか批判してしまうかもしれない。
映画は、主人公らが再びの不倫で燃え上がるというよりは、今まで不倫に夢中で見えていなかったものが見えるようになり、やってきたことに対する報いを受ける物語と言った方が良さそうだ。非日常が日常へと変わり、彼らの元パートナーが感じていたのと同じような猜疑心が互いに生まれたり、自分たちの行いに対する周囲の冷たい視線に気づくようになる。
そしてこれは、ろくでもない人間の見本市みたいな映画でもある。ただ欲望に突き動かされているだけなのに、なんでも神様のせいにしてツライわーと言っている主人公はもちろんだが、まわりの人間も酷かった。江戸の仇を長崎で討つ店長や、主人公の不倫を知って急に冷たい態度を取る同僚など、当事者や関係者でもない人間たちが主人公に過剰な反応を示している。不倫は最低なのかもしれないが、全く関係ないのにそんな態度を取ってしまう彼らも最低だ。
それから、普段は感じが悪いくせに、実はいい人なんです、みたいな自己演出をする人も、相手に対する甘えが見えて気持ち悪い。主人公の不倫相手の妻も、確かに彼女が言うように、何も悪い事をしていないのに損な役割をすることになってしまっているが、だからといって被害者ぶって何をしていいわけではない。色々と酷い人たちばかりだが、どこででも割とよくみられる光景でもあるので、これが普通の世間の姿なのかもしれない。有名人の男女関係の不祥事で見られる異常なまでに熱のこもった反応は、それらが濃縮された形で表れているからなのだろう。世間なんてそんなものだ。ろくでもない。
終盤、思いもよらない悲劇が主人公を襲うが、それを受けての駅のホームでのシーンは、まるでロッキーでも観ているかのような盛り上げ方で笑えた。意味なく「エイドリアーン!」と叫んでも違和感はなかったはずだ。そしてこれは、主人公の自己陶酔ぶりがよく分かるシーンでもある。悲劇のヒロインを気取りたい人が見ると気持ちよくなれそうな映画だ。だがメロドラマとは本来そういうものだから、その意味では正しい映画なのだと言えるだろう。
スタッフ/キャスト
監督 西谷弘
脚本 井上由美子
出演 上戸彩/斎藤工/伊藤歩/平山浩行/黒沢あすか/志賀廣太郎/三浦誠己/渋川清彦/松居大悟/中村育二
音楽 菅野祐悟