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「ほつれる」 2023

ほつれる

★★★★☆

 

あらすじ

 夫と家庭内別居状態の女は、知り合った男と密会を重ねるようになる。

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感想

 夫との関係が冷え切り、知り合った男と密会を重ねる女が主人公だ。ある密会の直後に男が事故で死んでしまったことにより、主人公の日常が少しずつ変化していく。

 

 主人公夫婦は別室で眠り、よそよそしい会話を必要最小限で交わすような、傍から見れば完全に破綻した関係だ。それなのに夫は新しく家を買おうとしていて、え、まだ関係を続けるつもりなの?と驚いてしまった。だが、彼にはこれを冷え切った関係を打破するきっかけにしたい思いがあったのだろう。

 

 

 夫は現在の関係と向き合い、改善しようと考えているのだが、主人公はそれを避けようとしている。夫が大事な話をしたいと言っているのに、ちゃんと座って相対するのではなく、なぜか立ち話になってしまうのが象徴的だった。

 

 主人公は夫との関係だけでなく、万事がこの調子でまともに向き合ってこなかったのだろう。誰かと対面で話すシーンがほとんど無い。事故に遭った男のために救急車を呼ぶことすらもせず、そのまま流してしまった。その都度、問題を受け止めて真摯に対処してこなかった結果が、ズルズルと続く夫婦関係に表れている。

 

 だが男の死をきっかけに、彼女のその姿勢が少しずつ変わっていく。心を痛めた彼女がそれに向き合おうとしたことがきっかけだが、その結果、周囲の人たちに半ば強制的に向き合わざるを得ない状況にされてしまったことも大きい。

 

 そして主人公は現実を直視し、夫との別れを決断する。最後に夫婦二人とも、それでも別れたくないと言っていたのが印象的だが、それもまた本当の気持ちなのだろう。どう考えても別れるべきだが、別れたくない気持ちもある。

 

 だがそれは別れるべきではない理由があるからではなく、別れる決心を先送りにしたいがためだけのものなのかもしれない。これは恋愛に限らず、人生の局面で起こりがちな感情だ。この気持ちを知らずに来れた人は幸せだ。

 

 こんがらがっていた問題がほどけてスッキリしたとも、低調ながらも続いていた夫婦生活にほころびが生じてしまったともいえる結末だ。そのどちらとも取れる映画のタイトルが秀逸だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 加藤拓也

 

出演 門脇麦/田村健太郎/染谷将太/黒木華/古舘寛治/安藤聖

 

ほつれる

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