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「卍 まんじ」 1983

卍 まんじ

★★★☆☆

 

あらすじ

 ふとしたきっかけである女性と関係を持つようになった若い女は、夫と住むその女の家に転がり込み、三人の奇妙な共同生活を送るようになる。

 

感想

 主人公に万引きするところを見られた高瀬春奈演じる女が必死に口止めをする冒頭のシーンがすごかった。現場で特に咎められたわけでもないので無視すればいいのに、わざわざ後をつけて主人公の家まで行き、「夫が警察に勤めているのでバレるとマズいんです」と自ら弱みをさらけ出す。墓穴を掘っているとしか思えないのだが、これは目撃者を消そうとする犯罪者の深層心理から来ているのだろうか。主人公からすれば相手は押しの強いヤバい奴だし、住んでいるところもバレてしまったしで、怖くて仕方がないはずだ。女が最初から主人公に気があって狙ってやったという事なのかもしれないが。

 

 そんなよく分からないきっかけで付き合い出した二人。原田芳雄演じる刑事でもある女の夫に怪しまれて最初はコソコソしているのだが、やがて開き直って主人公は夫婦の家に居候するようになる。女が離婚を切り出して夫がそれを拒否したからそうなったわけだが、どちらかが一緒に住みたくないと言った時点で本来なら夫婦は終わりだよなと思わなくもない。片方が別れたくない、一緒にいたいと言えば離婚できないのはやっぱり変だ。一度は一生添い遂げると誓ったからという事なのだろうが、そもそも一生を誓うこと自体に無理がある。

 

 

 前半は時々前衛的な表現がありつつも、女二人が仲良くするだけのとりとめのない感じだったが、中盤以降は主人公が自由に振る舞い出して、女の夫とも関係を持つようになってから少し面白くなってきた。三人で取り調べごっこをする終盤のシーンはまるで舞台劇を見ているかのようで見ごたえがあった。樋口可南子演じる主人公の関西弁が映画に独特のリズムを与えている。

 

 ただ雰囲気だけでいまいち何が言いたいのかよく分からない部分があったのは否めない。印象的に登場するハンガーの絵画やハンガーのあった部屋が重要な意味を持っていそうだが、彼らの不安定な状況を表していたのか。ある者はハンガーに辛うじてとどまり、ある者はそこから落ちてしまった。結局は皆が気まぐれな主人公に振り回されてしまったという事なのだろう。彼女の存在が、元々あった夫婦間の問題を表面化させたとも言える。これはいつかは起きるはずだった問題で、逆にこれがいつまでも表面化しなかったのならもっと不幸になっていたのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 横山博人

 

原作 

 

出演 樋口可南子/高瀬春奈/中島ゆたか/小山明子/梅宮辰夫

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卍 まんじ

卍 まんじ

  • 樋口可南子
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卍 (映画) - Wikipedia

卍 まんじ(1983年版)(R15+) | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

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