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「座頭市血煙り街道」 1967

座頭市 血煙り街道

★★★★☆

 

あらすじ

 相部屋となった亡くなる直前の女に、子供を父親のもとに送り届けて欲しいと頼まれた座頭市。シリーズ第16作。

 

感想

 子供を送り届ける主人公が、道中で出会った旅役者の一座と同行する序盤のシーンで、唐突に中尾ミエ演じる旅役者が歌い出し、急にミュージカルみたいになったのは面白かった。意表を突く演出で驚いたが、牧歌的でなかなか味わい深く、娯楽作品らしさがある。

 

 いくつかの騒動がありながらも目的の宿場町に到着し、後は子供を引き渡すだけになった主人公。だがその父親が事件に巻き込まれていることを知って、その解決に乗り出していく。その過程で主人公とは無関係に、片想いの男のために動いて無残に切り捨てられてしまった女の存在は物悲しかった。こういう日陰の人生もある。

 

 

 物語が佳境に入り、捕らわれた子供や女を救出するために、敵の立て籠もる採土場に主人公が乗り込むシーンは、砦のようなロケーションや勇ましい音楽がまるで黒澤映画のようで気分が盛り上がった。大勢の敵を相手に主人公が切れのある動きを見せるチャンバラシーンも見応えがある。

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 ただ戦いが終わり、解放された子供が主人公に飛びつくシーンでは、いきなり大げさな音楽が流れだして興醒めしてしまった。タイミングが早すぎだし、そこまで感動的な場面にも思えなかったので、あざとさが目立ってしまった。

 

 最後が残念だったなと思っていたら、実はここからが本当のクライマックスだった。雪が降りつもる中で、因縁の男との一対一の対決が始まる。単純にチャンバラとしても良かったが、主人公が懇願するように捨て身でガムシャラに向かっていく姿が泣けた。しんしんと降り続ける雪が、まるで主人公の悲壮感を表しているかのようで、とても印象的な良いシーンだった。

 

 主人公が必死に訴えていたのは、子供でも分かりそうな人の道だ。それを通そうとするのがアウトローの主人公で、それを拒絶するのが役人なんて、なんて世知辛い世の中なのだと悲嘆したくなる。見ず知らずの女に頼まれて他人の子供をわざわざ送り届けるような義理堅い男は、逆に普通の人生を送ることは難しいのかもしれない。

 

 最後に主人公は懐いて追いすがる子供を振りほどき、一人で旅立っていく。子役の子供は滑舌も悪く、正直なところ憎たらしいくらいだったのだが、変に物分かりが良い子供なんかよりも、これくらい融通の利かない子供の方が案外可愛く感じてしまうものなのかもしれない。橋の下で静かに涙を流す主人公の姿に胸を打たれる。

 

スタッフ/キャスト

監督 三隅研次

 

脚本 笠原良三

 

原作 「座頭市物語」 「ふところ手帖 (中公文庫 A 64)」収録

 

出演 勝新太郎/近衛十四郎/高田美和/朝丘雪路/中尾ミエ/小池朝雄/松村達雄/なべ・おさみ

 

音楽 伊福部昭

 

座頭市血煙り街道 - Wikipedia

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