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「イン・ザ・ハイツ」 2021

イン・ザ・ハイツ(字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 ニューヨーク・ワシントンハイツで食料品店を営む移民の男は、いつか故郷のドミニカ共和国に戻り、父親のやっていた事業を復活させたいと夢見ている。

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 ミュージカル舞台の映画化作品。143分。

 

感想

 中南米系の移民たちが暮らすニューヨークのコミュニティーを描いたミュージカルだ。登場人物らは歌うだけではなくラップもする。もっと重低音を効かせればいい感じのハードなヒップホップになりそうなところを、そうはしないで陽気なサウンドに仕上げているのがいかにもラテン系だ。全編が陽気な音楽に包まれていて楽しい。

 

 主人公は亡くなった両親の後を継いで食料品店を営む男だ。地元コミュニティーに愛着を感じながらも、いつか故郷のドミニカ共和国に戻ることを夢見ている。ただ、戻ったところでやっているのかという疑問は最初からあった。子供の頃の懐かしい思い出が忘れられないのが理由だから、心情的には分からなくはないのだが、やっていけるのならわざわざ移民などしなかったはずだ。

 

 主人公のコミュニティに対するまなざしと共に、従弟や幼なじみといった周辺人物たちが移民としての様々な苦労を抱えながら生きていることも描かれている。特に地元の星として一流大学に進んだ女性が偏見にさらされ、傷ついて帰ってきたことが明らかになるシーンはショッキングだった。今だにそんなことがあるのかと驚いてしまう。

 

 

 異国の地で傷つき、落ち込む彼らを支えてくれるのが、移民のコミュニティーなのだろう。同胞たちで互いに励まし合い、ルーツに対する誇りを取り戻し、強く生きるためのパワーを充填する場となっている。ネイルサロンでの女たちのたくましいおしゃべりには、そんな移民としてのメンタリティーを窺わせるものがあった。

 

 主人公と同世代の若者の奮闘ぶりだけでなく、親や祖母の世代の苦労や思いも描かれて、移民とコミュニティーの歴史を感じさせるような大きな物語となっている。それを象徴するように、主人公が次の世代の子供たちに物語る形式だ。

 

 どこか「ユージュアル・サスペクツ」を思い起こさせるようなどんでん返しの結末は、当初に浮かんだ疑念にちゃんと応えてくれている。移民にはいろんな事情があるので一概には言えないが、出てきた場所はもはや戻る場所ではない。今いる場所が生きる場所で、それがどうしても辛かったらまた別の場所へ行くしかない。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョン・M・チュウ

 

製作/出演 リン・マニュエル=ミランダ

 

出演 アンソニー・ラモス/コーリー・ホーキンズ/レスリー・グレイス/メリッサ・バレラ/アリアナ・グリーンブラット/オルガ・メレディス/ジミー・スミッツ/ダフネ・ルービン=ヴェガ/ダーシャ・ポランコ/マーク・アンソニー

 

音楽 リン・マニュエル=ミランダ

 

イン・ザ・ハイツ(字幕版)

イン・ザ・ハイツ(字幕版)

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イン・ザ・ハイツ (映画) - Wikipedia

 

 

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