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「幕末太陽傳」 1957

幕末太陽傳 デジタル修復版

★★★★☆

 

あらすじ

 品川遊郭で豪遊するも代金を払わず、居座って様々な所に顔を出し小銭を稼ぐ男。

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感想

 ストーリー自体も面白いが、まずは何よりもフランキー堺演じる男のキャラクターが良い。飄々として物腰が柔らかく人当たりがよく、だけど抜け目なく芯があり、反骨心も秘めている。なかなか豪華な役者陣の中でもひときわ目立って、生き生きとしている。

 

 力が強い男でもハンサムな男でもなく、こういう男がいつの世の中でも生き残ることができるのだろうなと思わせるようなたくましさだ。だがこれは、彼の本来の性分ではない。蜘蛛の巣の張った布団部屋にひとり取り残された瞬間や、遊郭をでていく際に二人の女郎の寝顔を見た瞬間、どこか孤独で寂しそうな本来の姿をすっと見せている。最後も出ていく決意をして気が抜けたのか、いつもは人を食った態度の彼が、逆に相手に飲まれてしまっている。

 

 

 そしていつも不吉な咳をして、どこかに死の影を漂わせている。これもこの人物の深みを増している。体の不調に気付かぬふりをして強がるのではなく、受け入れて自分で薬を調合したり診てもらったりと出来る限りのことをして、死んでたまるかと嘯いている。

 

 英国公使館焼き討ちを行った頃の高杉晋作や井上馨、久坂玄瑞らも登場しているので、主人公の咳はのちに高杉晋作が肺結核で死ぬことと何らかのつながりを持ってくるのかと想像したが、これは考えすぎだった。

 

 古い白黒の映画だが、見ているこちらの気力が湧いてくるような、元気になれる映画だった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 川島雄三

 

脚本 田中啓一/今村昌平

 

出演 フランキー堺/左幸子/南田洋子/石原裕次郎/芦川いづみ/梅野泰靖/金子信雄/山岡久乃/岡田真澄/菅井きん/小沢昭一/西村晃/殿山泰司/二谷英明/小林旭/加藤武*

*クレジットなし

 

音楽 黛敏郎

 

幕末太陽傳 - Wikipedia

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