★★☆☆☆
あらすじ
瞬間移動能力を持つ男は、謎の組織に命を狙われるようになる。
感想
ある出来事をきっかけに瞬間移動の能力に目覚めた男が主人公だ。この能力が身に付いた理由などは特に説明されないまま、物語は進む。どんなに頑張ったところで完璧に説明など出来ないことは分かっているが、それでもそれらしい理由は何か欲しかった。何をさも当然のように普通に話を進めているのだ?と当惑してしまった。
そんな能力に気付いた主人公は、厳重な銀行の金庫に忍び込み、大金を盗んでリッチな暮らしをするようになる。特殊能力を手にしてやることが、誰でも思いつきそうな俗なことなのがリアルで良い。
ただ主人公はその大金で高級バイクなどを何台も購入していたが、瞬間移動できるのに高性能バイクは必要?と思わなくもない。だが移動が目的ではなく、乗ること自体を楽しんでいるということなのだろう。彼は海外へ行くのも一瞬なので交通費もかからず、大金を持っていても案外お金の使いどころがないなと思ってしまった。逆に言えば、現代は移動にたくさんお金を使っているということでもある。
一日の間に世界各地を移動したりして優雅な暮らしをしていた主人公だったが、ある日謎の男に突然襲われる。古代から存在する瞬間移動能力を持つ人間を退治する集団の一人だということが後に判明するのだが、この両者が対立する意味がよく分からなかった。
彼らは、瞬間移動する人間たちに何か不利益を被ったわけでも、被害を受けたわけでもない。それなのになぜ能力者たちを目の敵にして、命をかけてまで倒そうとするのかと不思議で仕方がなかった。その情熱は何処から来るのだろうか。一応はカルト的な思想からということにしていたが、今でも特に利害関係もない集団に執拗に粘着し、嫌がらせをして楽しんでいる人たちがいるので、そういう類の人たちなのだろうと思えば納得できなくもない。
しか彼らの存在は、能力を持った人たちにしてみれば迷惑でしかない。ある日突然見知らぬ集団に襲撃されるなんて、相当な恐怖だ。狩りの標的となった鹿はきっとこんな気持ちなのだろうなと思ったりした。この両者の戦いに意義を見出せず、その後の展開は冷めた視線で見つめるしかなかった。これなら大金を奪われた銀行との対決にしてくれた方がまだしっくり来る。
それに意味のない瞬間移動が多すぎるのも気になった。だが能力を使わないと映画的に意味がない。逃げたり追いかけたり、旅をしたりと移動の過程がドラマとなることが多いので、それを省略してしまう「瞬間移動」は、物語の題材として効果的に使うのは意外と難しいことなのかもしれない。
敵の集団がヘイト集団に見えたり、瞬間移動能力を持つ人間を憎んで戦っていた敵の一人が、自分の子供がその能力を持っていることに気付いて葛藤したエピソードに同性婚反対運動する人の子供が同性愛者だった話を連想したりして、現代社会のさまざまな問題を炙り出しているのかと思ったりもしたが、きっとそれは考え過ぎだ。
スタッフ/キャスト
監督 ダグ・リーマン
脚本 デヴィッド・S・ゴイヤー
脚本/製作 サイモン・キンバーグ
出演 ヘイデン・クリステンセン/ジェイミー・ベル/レイチェル・ビルソン/マイケル・ルーカー/アナソフィア・ロブ/マックス・シエリオット/ダイアン・レイン/テディ・ダン/ジェシー・ジェームズ/*クリステン・スチュワート
*カメオ出演
音楽 ジョン・パウエル