★★★★☆
あらすじ
公私ともに順調な日々を送っていたニューヨークポストの若い女性記者は、身体の不調に襲われるようになる。抗NMDA受容体抗体脳炎を患った記者の実話を基にした物語。
感想
病気ものということで、闘病生活が描かれるのかと思ったら、どんな病気なのかを探り当てることに焦点を当てた映画だった。ある意味では斬新かもしれない。ただ、病名が分かっていればどんな治療を受ける必要があるのかが分かるので闘病が出来るが、何の病気かさえ分からない状態では闘病すらも出来ないわけで、もっと辛い。
どんな検査をしても異常はなく、だけど明らかに異常な主人公の様子は、早く病気を確定して治療してやれよと、観ているこちらも段々とイライラしてくる。確かにこの状態が続いたら本人も周囲も大変だ。このなんとも言えない状態の時間帯を、主演のクロエ・グレース・モレッツが、あの放っておけない感じの表情と演技で魅せてくれる。これは、彼女じゃなかったら場が持たなかったんじゃないかという気がする。
この映画で一番すごいのは主人公の両親だろう。原因不明の主人公に匙を投げ、精神病院に送り込もうとする医者たちに必死に食い下がる。この両親でなかったら、主人公はそのまま精神病院で一生を送ることになっていただろうことを思うと、交渉というのは大事だなと痛感する。しかし「医者にプレッシャーを与える」とか、対等にやり合うとか、なかなか出来る事ではない。それだけ必死だったということだろう。
そしてこの映画は善人ばかりが登場する。両親も恋人も、上司も同僚も皆いい人で、環境に恵まれすぎ、という気がしないでもない。特に上司や同僚の優しさが羨ましいほどだった。実話なので悪く描けないというのがあるのかもしれないが。
どう話が展開するのかという興味でダレることなく見ることが出来たが、振り返ってみるとすべてが中途半端な描かれ方だったような気がしないでもない。主人公と恋人との関係や両親の思い、原因を突き止めるまでの医者の熱意、病気からの回復など、どれも一通り描いてみました、というだけで、一番何を描きたかったのだろうという疑問が湧いてきた。でも、クロエ・グレース・モレッツが可愛かったからまあいいか、と思っている自分がいる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ジェラルド・バレット
原作 脳に棲む魔物
製作 ベス・コノ/リンジー・マカダム/ロブ・メリリース/シャーリーズ・セロン/A・J・ディックス
出演 クロエ・グレース・モレッツ/ジェニー・スレイト/トーマス・マン/タイラー・ペリー/キャリー=アン・モス/リチャード・アーミティッジ/ナヴィド・ネガーバン