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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「顔」 1957

松本清張 顔

★★★☆☆

 

あらすじ

 追いすがる腐れ縁の男を殺して東京に向かった女は、モデルとして成功を手に入れるがやがて事件の目撃者の存在に怯えるようになる。

 

感想

 岡田茉莉子演じる主人公が、電車から男を突き落としたことから物語は始まる。詳しい状況はまだ明かされないが、男が主人公を脅しているようだったし、殺意はあったのかもしれないが、もみあいからの事故のようなものにも見えなくはなかったので、逃げずに目撃者のフリをして警察を呼べばよかったのにと思ってしまった。ただ黙っていればバレることなく済ますことが出来るかもしれないとの期待から逃げてしまったのだろう。この時たまたま目撃者がいたことが、のちのち彼女を苦しめることになる。

 

 電車の中の二人の様子から、彼女は男に弱みを握られた気の毒な身の上の善良な女なのかと思っていたら、全然違っていて意外だった。東京でモデルとして成り上がることを目指して、親切な先輩を蹴落とし、体を張ってスポンサーを獲得し、なりふり構わず突き進んでいる。美しい岡田茉莉子の顔が段々ヒール味を帯びて見えてくる。

 

 

 ただ彼女の境遇が恵まれていなかったのは事実のようで、善良で貧しいまま一生を終えるくらいなら、なんでもやって金持ちになってやるという気持ちは分からなくはない。今でいうギャングスタのラッパーみたいなもので、それはそれで一つの生き方として他人が否定できるものではないだろう。

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 主人公の事件を追うのは田舎者の刑事。やがては東京の刑事と共に捜査をするようになる。演じる笠智衆の演技はわざとらしいのだが、どこか憎めない愛嬌があって面白い。ただの事故で済まそうとする東京の刑事をよそに粘り強く捜査を続け、事件の真相に迫っていく。

 

 その捜査に協力するのがたまたま事件を目撃した男だ。ただ彼は彼で暗い過去を持っており、刑事や記者に金をせびるような怪しい振る舞いを見せており、なにがやりたいのだか、いまいち伝わってこなかった。最終的に彼は直接彼女と接触を図ろうとするのだが、彼がいつ諸々の情報を入手したのかが謎で、描き方がだいぶ雑なように思えた。

 

 その他にも主人公が付き合っていたプロ野球選手に野球を辞めさせようとするくだりもよく分からなかった。人目を避けてひっそりと暮らしたいという事なのだろうが、それならわざわざプロ野球選手を選ぶことはないように思えた。そこは彼女が悪女ではなく、普通の女に戻った瞬間だったのかもしれないが。

 

 ちょっと事件の結末が曖昧ですっきりしないなと思っていたのだが、「都会は色付きの照明が多すぎる…」と笠智衆演じる田舎者の刑事がつぶやくところから始まる一連のエンディングは、往年のクラシックな社会派サスペンス映画の趣があってなかなか良かった。都会はたくさんの人を惹きつけ、その人生を狂わせる。なんとも言えない表情の主人公の顔で終わるラストシーンもじんわりと来て、余韻は悪くない。

 

スタッフ/キャスト

監督 大曽根辰夫

 

脚本 井手雅人/瀬川昌治

 

原作 「顔・白い闇 (角川文庫)」所収 「顔」

 

出演 岡田茉莉子/大木実/松本克平/千石規子

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音楽    黛敏郎

 

顔 (松本清張) - Wikipedia

 

 

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