★★★★☆
あらすじ
山林火災の消防隊員の女は、巨悪を告発しようとして殺された父親から証拠を託されて逃げていた少年を保護する。
原題は「Those Who Wish Me Dead」。100分。
感想
広大な森林の中にポツンと建つ監視塔にいた女消防士が、殺し屋から逃げる少年のために戦う物語だ。主人公は、かつての森林火災で自分のミスによって少年を助けられなかったトラウマがあり、それが少年を救おうとするモチベーションとなっている。
この他にも、少年の父親が巨悪から消されることを恐れ、警官の義弟を頼ってこの森林に逃げて来る過程などもスマートに描かれており、話の運び方が見事だ。説得力があって、変なところで引っ掛かることがないのでストレスなく見ることができる。
殺し屋たちはターゲットである少年の居場所を探るため、まずは彼らが訪れるはずだった義弟の夫婦宅を襲撃する。だが警官の夫は不在で、家には妊婦の妻しかいない。彼女は成す術なく殺されてしまうのかと暗い気持ちになっていたら、思わぬ反撃を見せて痛快だった。しかもその後は、拘束されて連行された夫を助けるために馬を駆って追いかけ、身重の体なのに大活躍を見せる。さすがは森の中でサバイバル・スクールをやっているだけのことはある。カッコ良すぎた。
そして彼女に続き、今度は主人公が活躍する。殺し屋たちが攪乱のために起こした森林火災の中での決闘は見ごたえがあった。殺し屋は少年をおびき出すために容赦なく主人公を殴り倒し、主人公は手斧で立ち向かう。痛みが伝わってくるような戦いだ。
このクライマックスでは、少年も守られる立場に甘んじず、ちゃんと戦っている。父親を失って家族のいなくなった彼は、今後の人生をたくましく生きなければならない。その資質があることを示していると言えるだろう。主人公も、そんな少年を相棒と呼び、子ども扱いせずに対等に付き合おうとしている。
ところで、街へ逃げる途中で主人公が雷に打たれしまうシーンがあるのだが、その後彼女が変なことを言い出して、少年に「雷でおかしくなっちゃった?」と心配されるも、「いや、元からだよ」と返すシーンは面白かった。
敵は全員倒して味方は全員助かった、とはならない苦みのある結末はリアリティがあった。ただ、最後にもうひと山何かありそうだと身構えていたので、何も起きずにそのまま終わってしまったのは拍子抜けだった。
関係ない人たちを殺してまで告発を阻止したかったわりには、あっさりと巨悪は引き下がってしまったなと呆気なさを感じてしまった。まだワンチャンスぐらいはありそうだったが、殺し屋たちが言っていたように案外と彼らは詰めが甘いのかもしれない。
森林火災の迫力ある映像の中で繰り広げられる殺し屋と頼もしい女たちの攻防戦だ。100分の中にみっちりと物語が詰め込まれ、満足感の高い映画に仕上がっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 テイラー・シェリダン
脚本 マイケル・コリータ/チャールズ・リーヴィット
原作 Those Who Wish Me Dead (English Edition)
製作 アーロン・L・ギルバート/スティーヴン・ザイリアン/ギャレッド・バッシュ/ケヴィン・チューレン
出演 アンジェリーナ・ジョリー/フィン・リトル/ニコラス・ホルト/エイダン・ギレン/ジョン・バーンサル/メディナ・センゴア/タイラー・ペリー