★★★★☆
あらすじ
製薬会社の営業となった男は、営業先の病院で出会った若年性パーキンソン病の女性に一目ぼれする。
感想
どんな女性とも仲良くなってしまう軽薄な男が主人公だ。製薬会社の営業となり、その能力を活かして病院受付の女性に取り入り、医者に近づいていく。
その過程で彼は、受付の女性と男女の仲になって患者の情報を聞き出したり、ライバル会社の薬を勝手に捨てたりと、倫理的にアウトなことをたくさんやっている。主人公は実在する製薬会社、ファイザー社の営業マンという設定になっているので、そんな描写をして大丈夫なのか?と勝手に心配になってしまった。だが、この映画は、実際にファイザー社の営業マンだった人が書いた体験記が原作となっている。だから大丈夫とはならず、それでもいいのか?とは思ってしまうが。
ただ、莫大な金が動く製薬業界ではこれが実態なのだろう。やれることは何でもやる。その後バイアグラの話もでてくるが、そこでの主人公の向かうところ敵なしの仕事ぶりは面白かった。結局いい商品があれば、営業マンがあれこれする必要はなくなってしまうのだろう。
そんな主人公が、病院で知り合った若年性パーキンソン病の女性と恋に落ちる。難病と聞くと勝手に深刻になってしまうが、彼女は明るく、そして性に奔放だ。すぐに主人公と関係を持つ。彼女を演じるアン・ハサウェイのもったいぶらない脱ぎっぷりが見事だった。そして、どこを見ているのだと思ってしまう視線がエロかった。
明るい彼女だが、主人公と恋人の関係になることは避けようとする。病気を気にして自制している。主人公もそんな空気を察して気持ちを抑え、踏み込まない。互いに互いを思いやるがために距離を縮められないのが切ない。
だが、彼女があらかじめ自身の病気によって二人の間に起こるであろう問題点をジョークにしてしまっていたり、軽薄そうに見える主人公が実はナイーブであるとバレてしまう前に笑いに変えてしまっていたりもしていて、映画の雰囲気は案外と明るい。暗くなったり重たくなったりしそうな要素は、先に笑いで潰そうとしている。
将来への不安から何度も彼女に突き放されながらも、その度に主人公は距離を縮めていく。彼女が好きだが、難病だからやめて別の誰かを探そう、と思えるわけがない。ベタなクライマックス後に主人公が語った「これまで何千人と知り合っても何も変わらなかったのに、たった一人の女性と出会っただけで人生が変わってしまった」という言葉が心に残る。重いテーマを軽妙に描いたラブストーリーだ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 エドワード・ズウィック
脚本/製作 チャールズ・ランドルフ/マーシャル・ハースコヴィッツ
原作 涙と笑いの奮闘記―全米セールスNo.1に輝いた“バイアグラ”セールスマン
出演 ジェイク・ジレンホール/アン・ハサウェイ/オリヴァー・プラット/ハンク・アザリア/ジョシュ・ギャッド/ガブリエル・マクト/ジュディ・グリア/ジョージ・シーガル/ジル・クレイバーグ/キャサリン・ウィニック
音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード