★★★★☆
あらすじ
経済犯罪に巻き込まれて自殺した上司のために、真相を追う会社員。
感想
詐欺に遭い、会社に損害を与えてしまったことを苦にして、自殺した上司が残した事件の概要をもとに、真相を探る主人公。しかし、そのために数か月も会社を休む彼も、それを許す会社もすごい。日本も昔は大らかだったという事か。でもその一方で、仕事の失敗で自殺する上司や、新婚旅行を取りやめてしまった新聞記者のような仕事人間もいるわけで、それがなんだか面白い。
この事件の犯人は、政界ともつながりを持ち、裏の世界で暗躍する右翼の大物。こういう人間はいつの時代もいるということか。今は表の世界の「桜を見る会」とかにも参加しちゃうようだが。被害者が表沙汰に出来ないような犯罪は狙い目で、弱みも握れるのでおいしいという事なのだろう。今回も身内が殺人事件を起こさなければ安泰だったはずだ。
しかし、世間に姿を現さないというこの大物の代わりに、主人公らに応対する男があまりにも態度がでかすぎて、ちょっと笑ってしまった。もうバレバレ、というか。でも大物の右腕であれば、そういう態度を取る人間もいるか。でも、映画「ユージュアル・サスペクツ」みたいに、え、この人が?みたいな、ギャップがあった方が驚きがあって良かったかもしれない。
主人公らが真相を追ううちに、松本清張の原作らしい、犯人の暗い過去が浮かび上がってくる。そんな苦境からのし上がり、身内も援助していた男。少し彼に対する見方が変わらないでもないが、元々は自分が直接関係ない殺人事件に、ジタバタし過ぎでは、と思わなくもない。ただ「ターミネーター2」の名シーンを彷彿とさせる最後は、得体の知れない怪物じみていて良かった。
主人公に協力する高野眞二演じる新聞記者のキャラも良かったし、あまり美人とは思えなかったが、鳳八千代や梅井淳子演じる謎の美女も登場し、程よい緊張感が続くスリルとサスペンスの映画だった。
タイトルの「眼の壁」とは何なのか良く分からないが、台風の目の周りの雲のことを「目の壁」「眼の壁雲」等と言うらしいので、そこから来ているのか。事件の中心のすぐ外側での人間模様、ということで、なんとなく話の内容とも合っているような気がする。
スタッフ/キャスト
監督 大庭秀雄
原作 眼の壁
出演
鳳八千代/高野真二/朝丘雪路/西村晃/左卜全
音楽 池田正義