★★★☆☆
あらすじ
同性の恋人がいることが周囲にバレて、宗教的な矯正施設に送り込まれた少女。90分。
感想
同性愛を矯正する施設に送り込まれてしまった少女が主人公だ。本人の意思で来たわけではないので不本意だが、それでも表面的には礼儀正しく振る舞っていたのが偉い。
欧米はこういう社交のマナーが普及しているので羨ましい。日本では「挨拶をしましょう」だけなのでその後が詰まってしまう。自分なりの方法で相手の様子を窺い、空気を読みながら、自分の居場所を作っていかなければならない。
だが欧米だと、スッとその場に入っていけるような定型のパターンが用意されているので、居心地の悪い思いをしないで済む。それに、その後どこまで距離感を詰めていくのかは本人次第だ。自由に決められる。誰でも円滑に人間関係を築くことが出来るシステムが確立されており、「人間力」なんて必要ない。
この施設は様々なプログラムを組み、入所者たちは幼さゆえに間違え、自分を同性愛者だと思い込んでしまったと考え、「正常」に矯正しようとしている。ただ、彼らの意図を汲み、必死に期待に沿う反応をしようとしている入所者たちの様子を見ていたら、これこそがマインド・コントロールだろうという気がしてくる。
途中で主人公が、同性の友人に対する憧れを恋愛感情と勘違いしてしまった、と指摘されるシーンがあるが、それを言ったら男女の恋愛にだって同じようなことは起きている。相手に求めるものとして、自分にないものを持っている人、と答える人だって多い。となると問題は「恋愛」とは何か?であって、同性愛は関係ない。
そんな無理を感じるプログラムをこなしながら日々を過ごす主人公らの様子が、美しく暗鬱なトーンで描かれていく。矯正に積極的で、適応しようと優等生的に振る舞っているメンバーにすら時おりおかしな挙動が見られ、自分を偽り抑圧することで、気付かぬうちに皆の精神が蝕まれていっていることがよく分かる。
暗い雰囲気の中で、時おり救いのように流れる音楽のセンスが良い。心に沁みた。
不信感が募り、ラストでついに行動を起こした主人公らの姿にしばし明るい気持ちになったが、冷静になってみると、中盤で彼らが話し合っていたような悲惨な未来が今後待ち受けているのかも、と不安の方が次第に大きくなっていった。
そもそも周囲が、主人公の起こした事件を「大問題」と捉え、こんな矯正施設に送り込んでしまったからこんな事になってしまった。これを性的興味から若者がわりとよく起こしがちな事件の一種だとみなし、数日の自宅謹慎ぐらいで済ませていたなら、主人公の未来を奪ってしまうことにはならなかったはずだ。社会の不寛容・無理解が、一人の若者の人生を狂わせてしまった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 デジレー・アカヴァン
原作 ミスエデュケーション
出演 クロエ・グレース・モレッツ/サッシャ・レイン/ジョン・ギャラガー・Jr/フォレスト・グッドラック/ジェニファー・イーリー/クイン・シェパード/マリン・アイアランド