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「新・悪名」 1962

新・悪名

★★★★☆

 

あらすじ

 終戦後、大阪に戻った主人公は闇市で商売を始め、裏で取り仕切る組織の陰謀を阻止しようとする。シリーズ第三作。

 

感想

 前作で弟分の相棒が死んでしまったのに続編をやるというので、タイトル的にもてっきりリブート作で、何事もなかったかのように弟分が再び登場するのかと思っていたのだが、普通に前作の物語の続きになっていた。戦争から戻ってきた主人公が、死んだ弟分の実弟と知り合いコンビを組むようになる。

 

 戦死したと思われていた主人公が帰って来て、地元の皆が腰を抜かすシーンは嬉しい誤報だったと笑えたが、それで奥さんが別の男と再婚してしまっていたのは切なかった。戦争で祖国のために戦うとは結局、家族のために戦うということで、必死に戦い、なんとか生き延びて戻って来たらその家族がいなかった、なんて絶望でしかないだろう。

 

 だが終戦後のこの時期は、きっとそんな絶望はあちこちで見られ、日常茶飯事だったはずだ。主人公のようなパターンだけでなく、戻って来たら家族が死んでいたパターンもある。その絶望から再び生きる気力を奮い立たせるのは並大抵のことではないだろう。戦争なんてやるもんじゃない。

 

 昔馴染みの場所に出来ていた闇市を巡る陰謀を知り、主人公がそれを阻止しようとする物語だ。対立する組織のどちらにつくわけでもなく、ただ自分が正しいと思ったことをやり、自然とそれに皆が付いてくるようになる展開は熱い。弱い庶民のヒーローだ。

 

 

 敗戦で何もかもが変わってしまい、戦争から戻って来たばかりの主人公が時代遅れのおじさん扱いされているのは新鮮だったが、逆にしっかりと時代の波に乗っているのが、田宮二郎演じる男だ。まっすぐぶつかって来る主人公をヘラヘラと笑いながらいなす、食えない感じがなんともいえず良かった。

 

 きっと彼は戦時中は先頭に立って「皇国万歳!」などと調子の良いことを叫び、美味しい汁を吸っていたのだろう。何も考えず、他人の事をなんとも思わない人間は強い。いつの時代にもこんな人はいて、もちろん今もよく見かける。

 

 コンビというよりは別行動だった二人の思惑がクライマックスでついに一致する。思ったよりもあっさりと決着がついてしまったが、覚悟の違いを見せつけたということだろう。

 

 最後に中村玉緒演じる再婚してしまった元妻とのくだりが何かあるかと思ったが、何もなかった。中盤で元妻が主人公の不在中に訪ねてくるシーンがあり、それを知った主人公の浮かれぶりやその後の心を鬼する様子など、一連の心境を表現する勝新太郎の演技は見事だったが、あれが二人の最後の接触だったのかと思うと、なかなか悲しいシーンだった。

 

スタッフ/キャスト

監督 森一生

 

原作 悪名 (新潮文庫 こ 5-3)

 

出演 勝新太郎/田宮二郎/中村玉緒/藤原礼子/万里昌代/浜田ゆう子/茶川一郎/島田洋介/小松みどり

 

新・悪名

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