★★★★☆
あらすじ
社会の片隅で、万引きをしたりしながら、ひっそりと暮らす家族。キネマ旬報ベスト・ワン作品。
感想
タイトルから万引きだけで生活をしている家族なのかと思っていたがそういうわけではなく、夫婦ともにちゃんとした仕事もしている。ただそれだけでは大家族を支えるのは厳しいということなのかもしれない。
そして、貧しいながらも仲良く暮らす普通の家族、というわけでもないことも次第に分かってくる。自分の居場所を無くした者たちが肩寄せあって暮らしている。それに気づいた時、一家の者たちが「寒い、寒い」としきりに口にしていたのが意味深に思えてくる。
居場所がなく心が寂しいと、心細さから肌寒く感じるものなのかもしれない。自然と人恋しくなって、寄り添いあって暖を取ろうとしているようにも思える。互いの金を当てにしたり、万引きの仕事を手伝わそうという打算的な部分もないわけではないだろうが、それよりも何よりも彼らはつながりを求めているようにも見えた。
万引きをしたり、学校に通わせなかったりと、決して褒められた家族ではないかもしれないが、充分に幸福そうではある。そんな一家が揃って、夜空の花火を見上げるシーンは、まるで社会の薄暗い底から見つめられているような、複雑な気持ちになる印象的な場面だった。
一つの事件をきっかけに、再びバラバラになってしまった家族。何も血の繋がりだけが重要じゃないだろうという気にもなるが、子どもたちのことを考えると最善でもないだろうなということも分かる。だけど幸せの形なんて何通りもあるんだということを教えてくれる映画となっている。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案/編集
出演 リリー・フランキー/安藤サクラ/松岡茉優/池松壮亮/城桧吏/佐々木みゆ/高良健吾/池脇千鶴/樹木希林/緒形直人/森口瑤子/山田裕貴
音楽 細野晴臣