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「野のユリ」 1963

野のユリ [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 車で旅する青年は、故障のために立ち寄った荒野の一軒家で東ドイツの修道女らと出会う。

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 アカデミー賞主演男優賞。原題は「Lilies of the Field」。94分。

 

感想

 旅の途中でたまたま立ち寄っただけの場所に長居することになった黒人青年の物語だ。この青年を演じるシドニー・ポワチエがとても爽やかだ。陽気で礼儀正しく、知性も感じさせる。これで見事な歌まで披露するので、オバマ元大統領みたいなパーフェクトな人物なのかと思ったが、歌は音痴で吹き替えだったそうだ。ちょっと安心する。

 

 主人公は出会った修道女に神からの遣いだと思われ、断り切れずに彼女たちの教会づくりを手伝うようになる。そしていつの間にか彼の心に使命感が芽生え、仕事に打ち込むようになっていく。修道女たちは念願がかなうし、主人公も成長するしで、宗教的ないい話だ。無邪気な彼女たちとの交流にもほっこりする。

 

 

 だが見方を変えれば、女たちに取り込まれてしまった男の話と見ることも出来る。だから「砂の女」のような怖さを感じなくもない。だが世の中とはそんなもので、最初はそんなつもりはなかったのに一生の仕事になったり、軽い気持ちでやってみたことがライフワーク的な趣味になったりする。むしろ決めた通りの人生を歩む方が難しい。人生は何がきっかけでどうなるか分からない。「一期一会」だとか「人間万事塞翁が馬」なんて言葉に感じ入ってしまうのはそのためだろう。

 

 主人公が手伝いを始めた最初の頃、修道女が相手にも関わらず、ちゃんと報酬を貰うつもりでいたのは感心した。対価を貰って仕事をする考えがしっかりとあり、ボランティアといえども無償では働かないとの強い意志が見える。奇特にもタダ働きしてくれるのがボランティアだからと、節約のために積極的に利用しないと損、とか考えてるらしいどこかの国の人が聞いたらビックリするかもしれない。

 

 彼の後に続くように街の人々も協力をするようになるが、その中の一人が手伝う理由を「万が一、神様がいた時のための保険」と言っていたのも印象的だ。皆が何らかの対価を期待して行動している。宗教に関わる話なのに現金な、と思わなくもないがリアリティはある。逆に、何の見返りも求めないとアピールされる方が嘘くさく感じてしまうかもしれない。

 

 自然と集まった人々の力で協会が完成していく様子には胸が熱くなるものがあった。あまりにも善なる世界だと思わなくもないが、一種のファンタジーだと考えれば悪くない。ラストの主人公の姿に、彼は本当に神が遣わした者だったのでは?としんみりとしてしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作/出演* ラルフ・ネルソン

 

原作 The Lilies of the Field

 

出演 シドニー・ポワチエ/リリア・スカラ/ボビー・ドリスコール*

*クレジットなし

 

音楽 ジェリー・ゴールドスミス

 

野のユリ

野のユリ

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野のユリ - Wikipedia

 

 

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