BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「脳内ポイズンベリー」 2015

脳内ポイズンベリー

★★☆☆☆

 

あらすじ

 駅で偶然気になっていた男と遭遇した30歳目前の女性は、どうするべきか頭の中で脳内会議を繰り広げる。120分。

www.youtube.com

 

感想

 二人の男性の間で揺れる三十路女性の脳内会議の様子が描かれる。冒頭から脳内にいる5人の白熱する会議が繰り広げられ、この調子で2時間続くとつらそうだなと思ったのだが、2時間続いた。

 

 心の中で天使と悪魔が言い争う様子で人物の苦悩や葛藤を表現するよくあるモチーフの発展形だが、この物語には天使と悪魔だけしかおらず、天使と悪魔と「自分」になっていないのが失敗だった。脳内会議の途中経過や結果を受けて、主人公本体がどう感じたのかは描かれない。主人公は脳内会議の結果を出力するだけの存在だ。これではただのロボットにすぎない。

 

 

 主人公演じる真木よう子はガンダムみたいなものだ。ガンダムは、造形的にかっこいいと思うことはあるかもしれないが、たとえ手足が取れてもどうせロボットだからと心は痛まない。それと同じで、ただのロボットに見えてしまう主人公が傷付こうが落ち込もうがあまり感情移入できなかった。肝心な場面だけならまだしも、全編にわたって脳内会議をしているのでなおさらだ。

 

 それから脳内会議のメンバーも、一応それぞれにネガティブ担当やポジティブ担当などの役割はあるようなのだが、時々ブレて人間味が出てしまっているのがモヤッとする。ここではそれぞれが自分の役割に徹し、アウトプットした時にそれぞれの意見の反映具合の変化によって人間味が出るようにしないと、主人公が魅力的にならない。

 

 特に脳内メンバーのひとりで吉田羊演じる女性は、最初はネガティブで弱気な発言ばかり繰り返していたのに、男と付き合い始めてからは妙に強気な発言をするようになったのは違和感があった。ネガティブ担当ではなく、保守的とか内弁慶の設定なのだと言われたら納得できなくもないが。

 

 実際のところは天使と悪魔と自分ではなく、この映画のようにいろんな自分がいてその時々で違う自分がイニシアティブを取るほうが実態に近いのかもしれない。だが物語としては感情移入できる対象がなく、面白みがない。全員が傍観者に見えてしまう。

bookcites.hatenadiary.com

 

 脳内会議の場面も、何気なく言われた言葉を被害妄想的に拡大解釈し、とんでもない悪口を言われたように勝手に記憶を改変してしまうシーンは面白かったが、それ以外は可もなく不可もなくといったところだった。

 

 それから、こんなに超主観的な物語なのに、終盤に主人公のいないところで行われた男二人の喧嘩を突然ガッツリ描いた意味がよくわからなかった。

 

 なんとなく良いことも言っていたが、全体としては、「ときメモ」的な恋愛ゲームを皆で真剣にやっている人たちを見ているだけのような気持ちになってしまう映画だった。

 

 要所要所だけ脳内会議する形にするか、思い切って脳内だけで完結する密室劇にしたほうが良かったかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督 佐藤祐市

 

脚本 相沢友子

 

原作 脳内ポイズンベリー 1 (クイーンズコミックスDIGITAL)

 

出演 真木よう子/西島秀俊/神木隆之介/吉田羊/桜田ひより/古川雄輝/成河/浅野和之/野波麻帆/カンニング竹山/ともさかりえ

 

脳内ポイズンベリー - Wikipedia

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com