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「虚栄のかがり火」 1990

虚栄のかがり火(字幕版)

★★☆☆☆

 

あらすじ

 スラム街で愛人がひき逃げした車に同乗していたエリート証券マンは、人種差別を巡る運動の標的になってしまう。原題は「The Bonfire of the Vanities」。

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感想

 序盤からどんどんとテンポよく物語は進むのだが、これはどんな映画なのか、その要領を掴むのにかなりの時間を要してしまった。警察は被害者が白人だと必死に捜査するが、黒人だとおざなりになる。そんな人種差別の問題を描きつつ、それを多くの人が自身の思惑に利用しようとしている実態も描いて、ブラックなユーモアで笑わせようとしている。だが、この笑わせようとしていることに気付くのに時間がかかってしまった。

 

 そもそも「虚栄のかがり火」というタイトル自体が、どこか文芸大作の匂いがして、コメディだと気づきにくくさせているのが問題だと思うが、英語の原題も原作のタイトルもそれで、内容的にも間違っていないので、そこは仕方がないのかもしれない。

 

 

 一番問題なのは、映画の空気だ。シリアスなドラマにしては軽すぎるが、コメディにしては重過ぎる、どっちつかずのフワフワとした空気になってしまっている。真面目な顔してトボけたことを言うような、奇妙な味わいの笑いを生み出したかったのだと思うが、笑っていいのかどうか迷ってしまうようなシーンばかりだ。

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 それから主人公のキャラもはっきりとしない。彼は人権運動のターゲットにされてしまった気の毒な男のように描かれているが、そもそも彼は主犯でないにしても全く無実ではないし、彼の仕事や金、人生に対する考え方や取り組み方、ラストの行動を見ても、本来はヒールなキャラのはずだ。それをどう見てもベビーフェイスのトム・ハンクスがやること自体がミスキャストだろう。

 

 最後はモーガン・フリーマン演じる判事が演説をぶってすべてをかっさらい、なんとか形をつけることが出来た。だが人権問題やその周辺の諸問題など、かなり重くて深い問題を取り扱っているのに、それだけでいいのかと思ってしまう。それらを鋭くエグりつつ笑いに変えていくことも出来るはずなのに、ただトム・ハンクス頑張れ!みたいな映画になってしまっているのは残念だ。

 

スタッフ/キャスト

監督/製作 ブライアン・デ・パルマ

 

脚本 マイケル・クリストファー

 

原作 虚栄の篝火〈上〉

 

出演 トム・ハンクス/ブルース・ウィリス/メラニー・グリフィス/ キム・キャトラル/キルスティン・ダンスト/ケヴィン・ダン/ソウル・ルビネック/クリフトン・ジェームズ/ドナルド・モファット/アラン・キング/ベス・ブロデリック/カート・フラー/アダム・ルフェーヴル/*F・マーリー・エイブラハム

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*クレジットなし

 

虚栄のかがり火 - Wikipedia

 

 

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