BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「プッシャー3」 2005

プッシャー3 (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 娘の誕生パーティの料理を作りながら、仕事を任せた男が戻って来ないことに焦る麻薬密売組織のボス。

 

感想

 今回はシリーズ第一作目で主人公を追い詰めていった麻薬密売組織のボスが主人公。しかも、今回は彼自身が第一作目の主人公のような立場になってしまうという皮肉な展開。仕事を任せた男が帰って来ず、仕入れの支払いが出来ずに追い詰められていく。しかし、デンマークの裏社会の事情は全然知らないのだが、巨大な非合法組織があるわけではなく、小規模の集団が群雄割拠しているという事なのだろうか。主人公はボスとはいいながら、取り巻きは少なくちゃんとした組織もないようなので、日本の暴力団とは随分とイメージが違う。

 

 映画は、主人公の娘の25歳の誕生パーティーが開かれる一日に起きた出来事が描かれていく。娘にパーティの料理を頼まれた主人公は、厨房で料理を作りながら部下らに裏社会の仕事の指示を出している。それにしても主人公は料理が好きな設定のくせに、料理をする様子がまるでやる気のないバイトのようで、全然楽しそうじゃないのが面白い。しかも決して上手いわけでもないようで、部下を食中毒にさせてしまったりもしている。だからそんな主人公にパーティーの料理を頼む娘の神経がよく分からなかった。

 

 

 そしてこの娘がなかなかタチが悪い。父親から十分すぎるほどに愛され、この日もわざわざ料理を作ってもらい、豪華なプレゼントまでもらって幸せそうにしていたのに、自分の恋人のために突然父親の仕事に口をはさみ、無茶な交渉を始めるというえげつなさ。父親は娘のほしいものなら何でも買ってやると言ってくれているのだから、何もそんな父親の仕事の邪魔をするような口出しはしなければいいのにと思ってしまうのだが、そんな風に育てられてしまったのだから仕方がないのか。

 

 だが主人公にしてみれば、大量の料理を作るだけでも忙しいのに、仕事で自分の立場が危うくなるようなトラブルが発生し、その上、愛する娘に脅迫まがいの交渉までされてしまっては、耐えきれないほどのストレスがたまってしまうのも無理はない。そんな状況で、パーティの来賓たちに愛想よく振舞わなければいけないというのはつらかっただろう。我慢できずに、止めていたドラッグに再び手を出してしまったのも分からないでもない。

 

 そしてラストは、第一作でも登場した主人公の元部下が登場し、かなりのおぞましい光景が繰り広げられる。しかしグロテスクな場面のはずなのに、この元部下があまりにもテキパキとありふれた日常かのように仕事をこなしていくので、そのギャップについつい笑ってしまいそうになる。最後はなんだか彼にすべてを持っていかれてしまったような気分。このシリーズは彼のための物語だったのではないかというくらい、彼が頼もしくカッコ良く見えてくる。ちゃんと第一作で語っていた夢を有言実行で実現させているし、最悪の環境でも決して希望がまったくないわけではない、ということを教えてくれている。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 ニコラス・ウィンディング・レフン

 

出演 ズラッコ・ブリッチ/アイヤス・アガク/マリネラ・デキク/クジム・ロキ
スタッフ

 

プッシャー3 (字幕版)

プッシャー3 (字幕版)

  • ズラッコ・ブリッチ
Amazon

プッシャー(R15+) シリーズ プッシャー3(R15+) | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

関連する作品

bookcites.hatenadiary.com

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com