BookCites

個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「楽園」 2019

楽園

★★☆☆☆

 

あらすじ

 少女失踪事件が起きたある小さな集落の人々のその後。

 

感想

 冒頭からしばらく、登場人物たちの挙動不審で不自然な言動が続く。外国人役のたどたどしい日本語だったり、心を閉ざした青年のぎこちない動きだったりと、妙に引っかかるわざとらしい挙動が目立ち、スッと物語に入っていけない。つかみは大失敗、といったところだ。おかげで映画に対して否定的な感情が芽生えてしまい、その後は何があっても心のリミッターが気分の盛り上がりを押さえつけてしまった。

 

 そして残念なことに、この低調な流れは最後までずっと続く。それなりの出演者が揃っているはずなのに、皆の演技が下手くそに見えて仕方がない。あれ、この人までこんな感じになっちゃうの?と驚いてしまう事もしばしばだった。だからこれは役者の問題というよりも演出の問題なのだろう。その状況に相応しくないようなセリフと動きをあてがってしまっている。そしてその人物がなぜそのような言動をするのかも説明されないので、更に不自然さは際立ってしまう。中でも杉咲花演じる女性が、なぜ村上虹郎演じる同級生を頑なに避けようとするのかがよく分からなかった。失踪事件の関係者という自分の過去を知っている人間だから避けようとしたという事なのか。彼女とその両親の関係がほぼ描かれないのも謎だった。

 

 

 映画は、少女の失踪事件の真相や佐藤浩市演じる男が起こした事件の詳細などは直接しっかりとは描かない。問題なのは事件そのものではなく、それに対する人びとの行動だという事を表現したかったのだとは思うが、そこに至る過程も曖昧にしか描いていないので、話がとても分かりにくいものになってしまっている印象だ。杉咲花演じる女性が「楽園」の担い手になる、みたいな結末だったが、彼女のどこにそんな可能性を感じられるのかはよく分からなかった。全体的に物語の点と点を上手くつなげることに失敗してしまっている気がした。

 

 この映画では、地方の片田舎でどうにもならない出来事が起きた時、住人達がスケープゴートや村八分を使って対処しようとした姿が描かれている。だから田舎は怖いよなと思ってしまうが、よく考えてみればこれはどこででも見られる光景だ。テレビやネットでも、叩いていい人がいつの間にか設定されて、皆で叩いている様子はよく目にする。そういう人たちの心理には、皆と一緒になって叩いていれば、自分にその矛先が向けられることはないという自己防御の気持ちが働いているように感じられる。皆と違う意見を言ってしまうのではないかと不安に思うよりも、皆と同じ事を言っていれば間違いないという安心感を重視している。スケープゴートなどはいじめと同じで、決してなくならないものなのかもしれないが、それをしていることに無自覚な人が多いのは恐ろしい事だよなと思ってしまう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 瀬々敬久

 

原作 「青田Y字路」「万屋善次郎」 「犯罪小説集 (角川文庫)」収録


出演 綾野剛/杉咲花/村上虹郎/片岡礼子/黒沢あすか/石橋静河/根岸季衣

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com

 

楽園

楽園

  • 綾野剛
Amazon

楽園 (2019年の映画) - Wikipedia

楽園 | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

bookcites.hatenadiary.com

bookcites.hatenadiary.com