★★★☆☆
あらすじ
余命間もないことを知った元美大生の男は、ふとしたきっかけで一人の女子高生と知り合う。手塚治虫が生前最後に構想したアイデアを基にした作品。
感想
余命間もない主人公を引っ掻き回す女子高生を演じる杉咲花がいい。この女子高生はヤングケアラーとして厳しい状況にあって同情するところはあるのだが、その鬱憤を外の世界で晴らそうとするタチの悪い少女だ。弱い者がさらに弱い者を叩く、負のスパイラルを体現している。主人公に対してもかなりの暴君ぶりで、現実世界では絶対に関わり合いになりたくないと思わせるのだが、彼女だから見れるというのはある。
映画の中では何度か、学校のプールに忍び込み制服のまま泳ぐ、青春ものならありがちなシーンもある。ベタだなと思いながらも、これまた彼女だから普通に見れてしまう。彼女の存在がこの映画をかなり助けている。
死ぬつもりはなかった主人公と死にたい女子高生が交流する物語。あまりダレることもなく、悪くない映画だったが、主演の野田洋次郎の表情の乏しい能面のような顔をずっと見続けるのは少々しんどいものがあった。おかげで普段はなんとも思わない他の役者たちのすごさがよく分かるという利点はあったが。
ただ彼は演技が上手いとは言えないかもしれないが、かといって下手くそというわけでもない。他の役者たちと比べると、恐らくキャラクターに問題があるのだろうなと感じた。歌が上手いからといって売れるとは限らないし、下手でも売れる歌手がいるのと同じ類の問題だ。
そういう問題がなければもっと主人公の心情の機微が浮かび上がり、より深みのある映画となっていたはずで、それが残念だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 松永大司
原案 手塚治虫
原作 トイレのピエタ
製作総指揮 吉田剛/江守徹
出演 野田洋次郎/杉咲花/リリー・フランキー/市川紗椰/宮沢りえ/岩松了/MEGUMI/佐藤健/古舘寛治/森下能幸
音楽 茂野雅道
編集 宮島竜治