★★★★☆
あらすじ
高級マンションの一室で起きたミステリアスな4人殺害事件の全容が、関係者へのインタビューによって明らかになっていく。160分。
感想
マンションの一室で起きた殺人事件の被害者たちが、家族かと思ったら実は全くの赤の他人同士だったことが判明し、その謎を追うミステリーだ。とにかく登場人物が多いことに驚く。彼ら関係者たちにインタビューをしながら真実が浮かび上がっていく構成になっており、皆が供述調書のようなセリフで証言していく。小林聡美など、時おり曲者的な演技をする者が現れて面白い。また、まだ少女の宮崎あおいや多部未華子も出演していて興味深かった。
彼らの話は単純に事件に関するものだけでなく、関係者たちの家族やその祖先の話にまで言及することもあり、事件の背景にある様々な人々のドラマが見えてくる。なんとなく松本清張ものを見ているような、なんとも言えないどんよりとした気分になってくる。冒頭には、事件の舞台となった荒川区の歴史を古代から振り返っており、単なる偶発的に見える事件にも土地やそこに住む人たちの歴史が影響を与えていることを示唆している。
皆の証言により事件の大まかな概要は明らかになっていくのだが、実は殺人事件そのものについての真相は明かしていない。事件現場にいた当事者たちはほぼ全員死んでしまっているので、犯人や被害者たちがその時何を考え、どう感じていたのかは分からない。それはこれまで見てきた膨大な証言を基に、観客それぞれが想像してくださいということだろう。その作業は事件だけでなく、人生や歴史についても考えなくてはならなくなるはずだ。
上映時間が二時間半以上あり、正直なところしんどさもあったが、独特な映像表現を交えて積み重ねられるストーリーは見ごたえがあった。たくさんの人物が登場するのに全く混乱させることのない演出も見事だった。ずしりとした余韻がいつまでも残る。心に余裕がある時にじっくりと見たい映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本
原作 理由 (朝日文庫)
出演 岸部一徳/村田雄浩/大和田伸也/久本雅美/宝生舞/松田美由紀/河原さぶ/風吹ジュン/山田辰夫/渡辺裕之/渡辺えり/菅井きん/小林聡美/古手川祐子/多部未華子/左時枝/細山田隆人/ベンガル/伊藤歩/立川談志/南田洋子/柳下毅一郎/石橋蓮司/麿赤兒/柳沢慎吾/島崎和歌子/小林稔侍/高橋かおり/宮崎将/花澤香菜/永六輔/勝野洋/片岡鶴太郎/根岸季衣/山本晋也/入江若葉/嶋田久作/峰岸徹/角替和枝/裕木奈江/大山のぶ代/木野花/中江有里