★★★★☆
あらすじ
夫と共にいわくのあるアパートメントに引っ越した女は、やがて妊娠するも調子を崩していく。
原題は「Rosemary's Baby」。136分。
感想
妊娠した主人公がどんどんと不安に陥っていく様子が描かれる。物語には不安になる要素が散りばめられている。まだ慣れない新しい住居、そこに一人取り残される日中の孤独感、ずかずかとプライベートに踏み込んでくる隣人と、心が落ち着かないことばかりだ。そしてそれに初めての妊娠が加わる。
主人公に不安要素がまた一つ増えたわけだが、そんな彼女に妊婦の体に良いからと謎のドリンクと食べ物を押し付けてくる隣人は気持ち悪いし怖かった。彼らからすれば良かれと思ってやっている事なので、まさか迷惑などとは微塵も思っていない。それだけに断りづらいものがあって、それがしんどい。善意の押しつけほどありがた迷惑なものはないだろう。
そして主人公は、そんな隣人の介入を許し、どこか他人事でいる夫にも不信を募らせる。女は妊娠した時から体に刻々と変化が訪れ、それを常に意識しながら生活するようになるが、男は相手を気遣ったり親になる自覚が芽生えたりはするが、必ずしもいつもそれを意識しているわけではない。完全に忘れている時もある。
なんなら相手との関係によってはまったく妊娠を知ることなく、つまりはなにも変わることなくいつも通りの生活を続けることだってあるわけで、そんな男女の違いから相手への苛立ちが生まれてしまうのだろう。こればかりは平等に負担し合うことは出来ないので難しいところだ。
主人公が様々なストレスから妄想に憑りつかれ、ノイローゼになったのかと思わせておいて、実はそうではなかったとなる展開が面白い。主人公は間違っておらず、その創造は正しかった。だが妄想だったらどんなに良かっただろうと思ってしまうほどの、畳み掛けるような終盤の主人公の裏切られっぷりは恐ろしかった。心が折れそうになる。
誰かに襲われたりする物理的な怖さではなく、じわじわと精神的に追い詰められていくような内面的な怖さに満ちた映画だ。何気ない電話ボックスのシーンで絶望的な気持ちにさせたりと、日常にふと感じる不安を利用して巧みに恐怖を演出している。
主人公を演じるミア・ファローの演技も見事で、その美しさもまた効果的だった。今まで彼女の中年以降の作品しか見て来なかったが、若い頃は美人だったのだなと今さら知った。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ロマン・ポランスキー
原作 Rosemary's Baby: Introduction by Chuck Palanhiuk (English Edition)
製作 ウィリアム・キャッスル
出演 ミア・ファロー/ジョン・カサヴェテス/ルース・ゴードン/シドニー・ブラックマー/モーリス・エヴァンス/ラルフ・ベラミー/エリシャ・クック/チャールズ・グローディン/ホープ・サマーズ/トニー・カーティス*
*ノンクレジット
音楽 クシシュトフ・コメダ
撮影 ウィリアム・A・フレイカー
編集 ボブ・ワイマン/サム・オスティーン
この作品が登場する作品