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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「今夜も映画で眠れない」 1989

今夜も映画で眠れない ポーリン・ケイル集 (アメリカ・コラムニスト全集)

★★★☆☆

 

内容

 映画評論家による評論集。

 

感想

 1989年に出版された映画評論集なので、当然この頃に公開された数々の映画について書かれている。それぞれの映画の内容をかなり詳細に取り上げて言及している部分があるので、たとえ昔観た映画でも、その内容をしっかり覚えていないとあまりピンとこない。観ていない映画に関しては、そもそも細かい部分は読んでもよく分からないので、ただ読み流すだけになってしまった。なので、この本をちゃんと味わうには、各映画を観た直後にその評論を読んでいくというスタイルが良さそうだ。それから翻訳がぎこちなく、読みづらく感じる部分が多かった。

 

(映画に適用されるテストがあるとしたら、すぐれた作品というのは、あなたをけっして徳の高い人間のように思わせないものだ。)

スタンド・バイ・ミー Stand by Me ――劇場を出て五分もすると雲散霧消してしまうノスタルジア

p114

 

  この引用した文章も若干、翻訳の日本語が不自然な感じがするがそれは置いておいて、確かに自分がいい人になったような気分にさせるような映画は面白くないよなと共感する。安易だし嘘っぽいしでそんな雰囲気を出している映画があったら警戒してしまうし、なかなか観ようという気が起きない。思うにそういう類の映画を観て心を動かしてしまうような人は、日常生活であまり道徳的であろうと心がけていない人なのではないかと疑ってしまう。日頃からいい人でありたいと願い、そう心掛けているのになかなかうまくいかずもどかしい思いを抱えている人たちにとっては、それがやすやすと達成できてしまうような映画の世界を観ても自己嫌悪に陥るだけ。むしろ善悪で揺れる人々が登場する映画に共感を覚えるはずだ。

 

 

 それから、本全体を通して読んでみて気付くのは「エイズ」への言及の多さだ。この本が出版されたのはエイズについて騒がれ出した時代。彼女はこの病気の存在が、映画の中での恋愛などといった人間関係の表現に変化を及ぼしていると、いくつかの作品で言及しており、いかにこの時代の人々の心理に深く影響を与えていたのかが窺える。今から何十年か後に現在の本を読む人は、同じようにそこからコロナの影響を読み取るのだろうか。

 

 文章は映画の内容を完全に覚えていないと分かりづらいのだが、引用した「スタンド・バイ・ミー」のものを見ても分かるように、各タイトルは一言でズバリとどんな映画か言い表していて面白い。すでに著者は亡くなっているが、ツイッターでこのタイトルのみをつぶやいていたらフォローしたかったくらいだ。タイトルだけでどの映画が面白そうなのかが分かるので、ときどき目次を眺めて次に観る映画の参考にしたい。

 

著者

ポーリン・ケイル 

 

翻訳 柴田京子

 

 

 

登場する作品

夢みる人びと―七つのゴシック物語1 (ディネーセン・コレクション 2)

アフリカの日々 (ディネーセン・コレクション 1)

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眺めのいい部屋 (ちくま文庫)

「死体(スタンド・バイ・ミー)」 「スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)」所収

ワインズバーグ・オハイオ

変身

ハスラー (扶桑社ミステリー)

ハスラー2 (角川文庫)

「Crimes of the Heart」 Beth Henley

ガラスの動物園 (新潮文庫)

怒りの葡萄〔新訳版〕(上) (ハヤカワepi文庫)

「堕ちた天使(堕ちる天使 (ハヤカワ文庫NV))」

「ザ・ショートタイマーズ(フルメタル・ジャケット (角川文庫))」

「山の水(丘の泉)」 マルセル・パニョル

妻を帽子とまちがえた男 (ハヤカワ文庫NF)

下記所収 「死者たち」

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ユリシーズ 文庫版 全4巻完結セット (集英社文庫ヘリテージ)

「何がサミーを走らせるか?(何がサミイを走らせるのか? (1975年))」 

「レディシオン・スペシャル(L'Edition Speciale)」 フランシス・キャブレル

アンナ・カレーニナ(上) (新潮文庫)

トリストラム・シャンディ 上 (岩波文庫 赤 212-1)

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)

「フロント・ページ」  ベン・ヘクト/チャールズ・マッカーサー

ブライト・ライツ、ビッグ・シティ (新潮文庫)

不思議の国のアリス (角川文庫)

 

 

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