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「密航0ライン」 1960

密航0ライン

★★★☆☆

 

あらすじ

 警察を利用し、犯罪者を使い捨てにしながら次々と麻薬密売のスクープを連発する事件記者と、彼のやり方に反発する友人でライバルの男。

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感想

 スクープのためなら友人や恋人を売り、利用価値の無くなった情報提供者はあっさりと切り捨ててしまう非情な新聞記者が主人公だ。最初は何をやっているのかいまいちよく分からなかったが、香港ー日本間の密売ルートを「0ライン」と呼ぶらしく、主人公はあくどい手を使いながらその実態を追い、スクープを連発しているということのようだ。

 

 前半は、主人公の非情な取材の様子がハードボイルドに描かれる。だが恋人を警察に売る直前に彼女と寝ていたのはちゃっかりしていて面白かった。彼が友人に非難されるほどの汚い手口を使ってまでも取材を続ける理由は、シンプルに「正義のため」だ。さすがに大義名分すぎて逆に嘘っぽく感じてしまうが、演ずる長門裕之がニヒルで存在感のあるアンチヒーローぶりを見せていて惹きつけられる。

 

 

 やがて主人公はそれまでの悪行の報いを受けて一時退場してしまうのだが、その後を引き継いだ彼の友人が香港への密航を企てるパートはスリルがあって見ごたえがあった。怪しげな人たちの間を渡り歩きながら、密航船に潜入するルートを手繰り寄せていく。この友人役の小高雄二はそれまではそうでもなかったのだが、この時のちょっと悪そうな感じは色気があって魅力的だった。

 

 裏社会だの闇の犯罪組織だのといった普段一般人が目にすることのない世界は、いつの時代も皆興味津々だ。当時の人たちは、今の人が「警察密着24時」みたいなドキュメント番組を見ているような感覚でドキドキしながらこの映画を見ていたのかもしれない。ジャズやブルースぽい音楽が流れるハードボイルドな雰囲気も趣があって、細かいことは気にせず気楽に楽しめる娯楽作品となっている。

 

スタッフ/キャスト

監督 鈴木清順

 

出演 長門裕之/小高雄二/清水まゆみ/中原早苗/小沢昭一/木浦佑三/高品格/東恵美子/永井智雄/嵯峨善兵/杉幸彦/相原巨典/雪丘恵介/河合健二/初井言栄/小泉郁之助/石崎克巳/野呂圭介/玉村駿太郎/久松晃/河野弘/柳瀬志郎/宮原徳平/柴田新/島村謙二/林茂朗/榎木兵衛/二木草之助/千代侑子/横田陽子/福田文子/佐久間玲子/小坂翠/高山千草/黒木理圭/高田栄子/古田祥/小柴隆/石丘伸吾/河瀬正敏/川村昌之/松丘清司/宮元三/速水脩二/東郷秀美/大須賀更生/高緒弘志/山中大成/藤井昭雄/日下部徹也/小野武雄/峰三平

 

音楽 小杉太一郎

 

密航0ライン

密航0ライン

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