★★★★☆
あらすじ
臨時教師として採用された主人公は、子供たちに性教育の授業を行うことにする。
原題は「Sex Ed」。90分。
感想
女性経験のない男性が、性教育の授業を担当することになってしまって大慌て、みたいなコメディかと思っていたら全然違った。むしろ主人公は、性の知識がほぼない子供たちを危惧し、積極的に性教育をしていこうとする側だ。演じるのは「シック・センス」で有名な元子役で、今やすっかり大人となったハーレイ・ジョエル・オスメント。童顔なのに小太りなおじさん体形で、この役にぴったりだ。演技も相変わらず普通にうまい。
邦題通り、性教育の授業は確かに白熱している。子どもたちが無邪気に率直な疑問をぶつけ、主人公が真摯に答えていく。こういう授業は照れや気まずさから妙に堅苦しくなったり、逆に下品になったりしてしまいそうなものだが、ちゃんと授業で使う言葉や扱う範囲を規定して、一定の基準を保っている。この授業風景を見ていると、アメリカは日本がまだ超えていない壁をいくつも越えてきたのだろうなと、彼我の差に呆然としてしまう。
日本だとまだ、大人が急に秘め事を大っぴらに語りだしたと皆で顔を合わせてニヤニヤしたり下を向いたりしてしまうレベルだろう。大人も子供もタブー視することなく、それを語ることができない。そして、そんな日本のはるか先を行くアメリカでも、まだ超えなければいけない壁は幾つもある。
この取り組みに反対する理由として、そんな教育をしなくても人類は子孫を残し続けて今までやって来たのだから必要がない、というのがあって、種を残すという意味では確かにその通りではある。だが子孫は残せたかもしれないが、ちゃんとした知識がなかったせいで思うような人生を送れなかった人は山ほどいるだろう。ただ子孫を残すためではなく、より良い人生を送るためにそういう知識は必要だ。
主人公の友人で性に奔放に見えたカップルが、生徒たちとの対話では彼らのために真摯に答えていたのが印象的だった。流されて望まない人生を送らないためにも、しっかりと自分を持っていないといけない。
ところでその授業シーンで、教材の一部にモザイクをかけていたのが気になった。オリジナルからなのか、日本版だけなのか分からないが、この学術的なシーンでモザイクいるか?と思ってしまった。とはいえ、モザイクがなかったら直視できなかったとは思うが。
昨今は表現の自由に敏感な人が多いらしいので、モザイク撤廃についてもついでに議論してほしいところだ。もはやネットでいくらでも見られるのだからモザイクなんて意味がない。モザイクに興奮する変な性癖の人間をただ量産するだけになっている。
物語は最初学校の話が中心だったのに、途中から急に主人公の恋愛話に移行してしまって戸惑ったが、最後はちゃんと学校の話に戻ってきた。主人公と神父の対立があっさりと解消してしまった印象はあるが、悪くないストーリーだった。それから未経験の男が主人公という事で、安易な終わり方を予想してしまったが、そうしなかった事にも好感が持てた。コメディ映画としてそれなりには面白いが、それよりも教育の姿勢に感心してしまう方が大きい映画だった。
スタッフ/キャスト
監督 アイザック・フェダー
出演 ハーレイ・ジョエル・オスメント/ロレンツァ・イッツォ/グレン・パウエル
SEXエド チェリー先生の白熱性教育 - Wikipedia
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