★★☆☆☆
あらすじ
新しいゲームの発表会を行うためにニューメキシコに向かったはずがなぜかメキシコに到着してしまったゲームプログラマーの男は、現地で謎の集団に追い回されるようになる。メキシコ映画。原題は「Welcome to Acapulco」。
感想
理由も分からず何者かに追われることになった主人公だが、何故だかのんきだ。何が起きているのか深く考えたり疑念を持ったりすることはなく、目の前に現れた人にそのままついて行ってしまうような、ただ流れに身を任せるだけのスタイルだ。単なる人違いで追われているだけだから、話せばきっとわかってくれるはず、という態度を終始貫いている。最初はそう考えてしまうのも仕方がないように思うが、相手が全然聞く耳を持たず、目の色を変えて迫って来るの見たら、普通は危機感を抱くはずだろう。
それから彼は単なるプログラマーのはずなのに、なぜかアクション映画の主人公が持っていそうな能力をすべて持ち合わせているのも不思議だ。臨機応変に動じることなく対応し、壁をよじ登ったり高い所から飛び降りたりと運動能力も高く、さらには射撃の腕さえ持っている。しかも平気で敵を撃ち殺す。全然説得力がなくリアリティが感じられないのだが、彼はゲームプログラマーなので、ゲームのキャラクターになり切ってしまっているからということなのだろうか。
それに彼を助けてくれるCIAの女性が自分に惚れていると、なんの根拠もなくなぜか思い込んでしまっている所にも、モテないオタクぽさがあるかもしれない。この映画は主人公が観客に語りかけるメタ的な演出が用いられているのだが、能天気でおめでたいこんな調子の主人公のたわ言を聞かされ続けるのは忍耐が必要で、イライラした。
主人公は元CIAや政府などいくつかの集団から追われている。そのため登場人物は多く、それぞれの関係性も複雑で把握しにくい。それをその都度主人公が観客に説明してくれる親切設計なのは助かるのだが、その説明が微妙に知りたいポイントを外してくるので、逆にモヤモヤが募ってしまった。しかもその登場人物たちはほとんど見せ場がなく、何もしないうちに死んでいってしまう。こんな事ならわざわざたくさん登場させる意味はあるのか?と疑問に思ってしまった。
CIAの女と敵の女との対決が妙にスローでもっさりしていたりするなどアクションシーンには迫力がなく、ストーリーも凡庸で、なんの盛り上がりもないまま、エンディングを迎えてしまった。クライマックスがどこだったのか全く不明だ。そして単なる主人公の妄想だと思っていたのに、当然のようにヒロインと結ばれたハッピーエンドには脱力してしまった。
スタッフ/キャスト
監督 ギレルモ・イヴァン
出演 マイケル・キングスベイカー/アナ・セラディーリャ/マイケル・マドセン/ポール・ソルヴィノ/ウィリアム・ボールドウィン/ブラッドリー・グレッグ