★★★★☆
あらすじ
離婚した母親について幼い頃に過ごした長野に戻って来た男子高生は、幼なじみと再会するが、ふとしたきっかけで体が入れ替わってしまう。
大林監督による1982年の映画「転校生」のセルフリメイク作品。120分。
感想
主人公の母親が離婚して、住んでいた尾道から地元に戻ってきたという設定で、今作の舞台は長野となっている。だが狭い路地があって細い坂道もあるごちゃごちゃとした雰囲気は、どことなく尾道とよく似ている。敢えて傾いた不安定な構図を多用する映像と相まって、何か不思議なことが起きてもおかしくないような幻想的な場所に仕立てられている。
そんな町の一角には神社の石段も見えたので、今回はここで体が入れ替わるのだろうなと予想していたのだが、そこではなくて全然別の方法だった。だが男女を左右に配置して、事故のあとは逆の位置に戻らせることで体が入れ替わったことを示す演出は見事だった。それに二人のもつれ具合は、体が入れ替わったことへの説得力がちゃんとあった。
幼なじみの相手の女子高生は、割とさっぱりとした性格のように感じたが、体が入れ替わった後は急激に女らしくなったような気がして少し違和感があった。だがそこは典型的にしておかないと演じにくい部分があったからなのだろう。二人とも熱演で、本当に入れ替わったように見えてくる。
入れ替わった体や役割の変化に戸惑う二人の様子をコミカルに描きつつも、次第に物語は深刻な展開になっていく。それと同時に独特の表現が増えて、不思議な世界観が醸成されていく。奇妙な世界へと、なんの衒いもなく突っ走っていく展開は、吹っ切れていて妙に気持ちがいい。その世界を自然に受け入れてしまっている。
深刻な展開は、二人の体が元に戻れば解消されるのかと思っていたが、そのまま悲しい結末になってしまった。だが深く交流すれば、相手の中に自分が残り、自分の中には相手が残る。だから相手がいなくなっても、自分の中にいる相手を大切にすることで悲しみを減らすことができる。そうやって人は別れを乗り越え、成長していく。
ところで映画の副題「さよなら あなた」は、オリジナル版の最後の言葉「さよなら わたし」に呼応してつけられたそうだが、よく考えると一周回ってすごい普通のことを言っているだけになっているのがなんか可笑しい。ムードで持っていかれてしまう映画だ。大林ワールドを堪能できる。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/音楽*
*學草太郎名義
脚本 剣持亘/内藤忠司/石森史郎/南柱根
出演 蓮佛美沙子/森田直幸/清水美砂/厚木拓郎/寺島咲/石田ひかり/田口トモロヲ/斉藤健一(ヒロシ)/窪塚俊介/根岸季衣/中原丈雄/細山田隆人/高橋かおり/宍戸錠/山田辰夫/入江若葉/小林桂樹*/犬塚弘/古手川祐子/長門裕之
*写真出演
登場する作品
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