★★★★☆
あらすじ
作家の卵の男が編集者にそそのかされ、ある少女の小説を書き直すことになる。
感想
文庫だと6冊にわたる長い小説だ。それだけに色々な要素を含んでいる。小説や父親の話、宗教や社会運動、ロシアの少数民族やユングまで、様々な話が次々と出てくる。村上春樹の凄いところはそういうものをすんなりと読ませるところだろう。自分の関心のある物事をすんなりと小説に含めてくる。料理のシーンとかそこまで具体的に書く必要があるのかどうかよく分からないが、魅力的で料理をしたくなったり、料理のあとはすぐに皿を洗うような、ちゃんとした生活をしないとな、という気にさせられる。
連合赤軍やオウムの出来事を連想させるような話であり、社会の秩序に影響を与えるのは、分かり易いビッグブラザーのような存在から、存在のはっきりしないような、曖昧な不特定な人々の集合体に変わっていく、という事を言いたいのかな、と感じた。そしてどんな状況になろうと、自分のやるべきことをやるだけだという事を。
とはいえ具体的にはよく分からなかったというのが正直なところだ。だがこの本の主人公である小説家の卵の男を通して、作者の小説観というようなものが見えてくる。彼のいうところが具体的に分からない部分はあるが、魅力的な小説ではある。よく分からないところがあるからこそ、もう一度読みたくなるのかもしれないし、もう一度読んでもいいと思える面白い小説だった。
最後、太陽が二つのぼるのかと思った。
著者
登場する作品
失われた時を求めて 1?第一篇「スワン家のほうへI」? (光文社古典新訳文庫)
登場する人物
チェーホフ/ディケンズ/ヤナーチェック/ジョン・レノン/ローリング・ストーンズ/フェイ・ダナウェイ/井上陽水/ソニーとシェール/プルースト/ウィリアム・シェークスピア/ユング
この作品が登場する作品