★★★★☆
あらすじ
様々な事情で事件を起こし、裁判所に社会奉仕活動を命ぜられた若者たち。
感想
スコットランドのグラスゴーが舞台で、社会奉仕活動を命ぜられた者たちはどこにでもいそうな田舎の悪そうな若者といった感じでリアリティがある。皆で集まって奉仕活動をする様子は無邪気な子供たちのようで、問題を起こしたとはいえ、根は悪い奴ではないのだろうな、と思わせる。ただ、この無邪気さが事件を引き起こすことも多々あるのだが。
そんな彼らを引率する男。休日には若者たちを連れて、ウィスキーの醸造所見学に出かけたりする。問題を抱える若者たちのために、親身になる姿に胸を打たれた。こんな感じでヒューマンドラマが進行していくのかと思っていたら、途中から思わぬ方向に話が進んでいってちょっと驚いた。
後半は、ウィスキーに興味を持った主人公を中心とした若者たちによる、奇跡的に見つかった高額落札間違いなしのウィスキーをめぐる物語へと話は変化する。ここからは話の流れが見事。クライムアクションとして十分に楽しめる。そして彼らの手元に残った一本のウィスキーの行き先が泣けた。
タイトルになっている「天使の分け前」は、ウィスキーなどの製造工程で起きる現象に対する用語らしいのだが、粋で良い言葉だ。この映画の中では、一本のウィスキーだけでなく、様々なものが「天使の分け前」として巡り巡っている。
さんざん悪い事をしてきた不良たちがハッピーエンドを迎えるのはどうなの、という気もしないではないのだが、彼らがやって来たことをぼやかすことも出来たのに、わざわざ詳細に描いているので、それを分かった上でのこの結末なのだろう。監督の誠実さが感じられる。劣悪な環境で育った彼らがまともに生きるための、培った経験を生かした就職活動だったと言えるのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 ケン・ローチ
出演 ポール・ブラニンガン/ジョン・ヘンショウ/ウィリアム・ルアン/ガリー・メイトランド