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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「TIME/タイム」 2011

In Time (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 遺伝子操作で25歳で年齢の進行が止まるようになった近未来。余命は通貨となった時間の量で決まる社会で、スラムで育った青年は生きることに疲れた富豪の男から100年以上の時間を貰うが、盗んだと疑われて追われることになる。

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感想

 25歳で年齢が止まる社会が舞台だ。大人はみな外見が25歳なので誰が親で誰が子で、そして誰が配偶者なのか、まったく見分けがつかないのが面白い。また、皆が自分の年齢を「25歳になってから何年」と表現しているのも興味深い。これは人間が序列を決めたがる生きもの、あるいはマウントを取りたがる生きものであることを示しているのかもしれない。

 

 そして25歳以降何年生きられるのかは、通貨の代わりとなっている時間をいくら稼いだかによって決まる。「時間だけは誰にでも平等に与えられるリソース」と言われているのに、この世界ではそれすらも不平等だ。富裕層には100年以上の時間を持っている者が多数いる一方、一日未満の時間をやりくりしながら何とか生きている貧しい者もいる。当然、その格差は大きい。

 

 しかしバス代には2時間分、高級車には59年分などと、費用を自身の余命の一部で支払うことは、金持ちですら精神衛生上あまり気分が良いものではなさそうだが、そのうち慣れてしまうものだろうか。それに24時間未満の持ち時間で暮らすのも、うっかり手続きを忘れてすぐに死んでしまいそうで怖い。だが現在の貨幣を基本とする生活だって突き詰めればそういうことなのかもしれない。それを時間に置き換えたことで、我々が命を切り売りしながら生きていることを生々しく実感できるようになっているとも言える。

 

 貧しい地区で暮らす主人公は、暴漢から助けた生きることに飽きた富裕層の男から100年以上の時間を譲り受ける。だがその男はそのまま自殺してしまったため、主人公は時間を強奪したと疑われ、当局から追われることになってしまう。主人公は金持ちの娘を人質にして逃げるのだが、そもそも何も悪いことをしていないのに逃げる理由がよく分からなかった。少なくともまずは説明を試みるぐらいはして欲しかった。

 

 

 その後は当局からの逃走劇となるのかと思いきや、主人公は人質の女と共に金持ちから時間を奪い、貧しい者に分け与える義賊のようなことを始める。正義感が強かったらしい父親の影響からか、思想が強そうなのは伝わって来ていたが、まさか社会主義の活動家の物語みたいになるとは思わなかった。

 

 しかも時間を扱うローン会社を襲撃するようなことは別にいつでもできたはずで、なぜこれまでやらなかったのだろうか。身寄りがなくなり、冤罪で追い詰められたから逆に決起出来たということなのだろうか。

 

 それから悪人は何人か登場するものの、それ以外の貧しい者たちは全員善人として描かれていて、それはあまりにも理想主義が過ぎるだろうと違和感があった。実際は勝ち取った時間を皆が平等に分け合うなんてことはなく、自然と醜い奪い合いが始まるに決まっている。お金と一緒だ。簡単に人間を変えてしまう。

 

 もっと面白くなりそうな設定なのに、思ってもいない方向に進んでいく映画だ。冤罪をきっかけに凶悪な犯罪者となってしまう男の物語とも言える。それはそれで皮肉が効いてはいるが。

 

 あまり映像に未来感のないSF映画だが、車には強いこだわりがあるように感じた。ヴィンテージなアメ車をベースにデザインした車が多数登場し、どれもクールだった。こういう一点突破的な表現方法もありかもしれない。案外未来の光景は、一部を除けば現在とさして変わらないような気もする。

 

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 アンドリュー・ニコル

 

製作 マーク・エイブラハム/アンドリュー・ニコル/エリック・ニューマン

 

出演 ジャスティン・ティンバーレイク/アマンダ・サイフリッド/キリアン・マーフィー/オリヴィア・ワイルド/マット・ボマー/アレックス・ペティファー/ヴィンセント・カーシーザー/ジョニー・ガレッキ/メリッサ・オードウェイ/トビー・ヘミングウェイ/レイチェル・ロバーツ/ヤヤ・ダコスタ/ベラ・ヒースコート/サーシャ・ピヴォヴァロヴァ/ジェシカ・パーカー・ケネディ/クリストフ・サンダース

 

In Time (字幕版)

In Time (字幕版)

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TIME/タイム - Wikipedia

 

 

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