★★★★☆
あらすじ
不倫相手の女性が殺されて、状況証拠から犯人に仕立てられそうになった警察署長は、真犯人を探す。
原題は「Out of Time」。105分。
感想
田舎町の警察署長が主人公だ。殺人事件の犯人に仕立て上げられそうになり、必死に捜査の手から逃れようとする。
ただ当初は、誰かにハメられたというよりは、この状況だと自分が一番疑われてしまうのでマズいなと、なんとか被害者との関係を隠そうと躍起になっているに過ぎない。目撃者に圧力をかけて証言の信ぴょう性を下げたり、ファックスで送られてきた通話記録を改ざんしたり、顔を見られたホテルの従業員を殴りつけたりしている。
観客は主人公が殺したわけでないことを知っているのでまだ見ていられるが、普通に捜査妨害だ。だが、いつバレるかと嫌な汗をかきながら必死に隠蔽工作を行う様子は、想像していたのとは違ったががスリリングだ。次から次へとやって来る窮地をどう切り抜けるのかとハラハラさせられる。機転を利かせて間一髪で難を逃れる主人公の剛腕ぶりは見事だったが、このあたりはドタバタ喜劇にしても面白くなりそうだった。
実を言うと映画序盤で、通報してきた人妻と仕事中に不倫をするような主人公にシリアスなサスペンスなどやれるのかと多少不安になっていたのだが、不真面目な彼のキャラクターに相応しいサスペンスになっていた。
主人公は事件に関与していないのだから、不倫はバレるかもしれないが堂々としていればいいのに、と思わなくもないが、事件の捜査を担当するのが妻で、しかも押収した大金を横領して不倫相手にプレゼントしてしまっているので、隠蔽しなければと考えてしまう十分な理由がある。その他のシーンもそうだが、一見無茶のようにみえて実は整合性のちゃんとあるプロットとなっていて、意外と不満は少ない。
それから、一人で焦りまくっていた主人公に気付き、何のメリットもないのに主人公の隠ぺい工作に黙って協力した同僚の男は頼もしかった。彼は酒に目がなく、主人公に悪事を唆すようなだらしのない男なのだが、その男気は立派だった。弱い自分をさらけ出せる人間の方が、本当は強くて信頼できるのかもしれない。確かに、彼とは真逆の清廉潔白そうな顔をしている人の方が、裏で悪いことをやってそうだし、いざとなると裏切りそうだ。
主人公が何の罪にも問われず、すべてがうまく収まってしまうラストは都合が良すぎるように感じてしまうが、それでもよい緊張感のある映画だった。時間を忘れて楽しめた。
スタッフ/キャスト
監督 カール・フランクリン
出演 デンゼル・ワシントン/エヴァ・メンデス/サナ・レイサン/ディーン・ケイン/ジョン・ビリングズリー/ロバート・ベイカー