★★★☆☆
あらすじ
実業家を殺害した若い男は、現場を女に目撃されるが悠然と去り、警察の追及が始まる。
アキ・カウリスマキ監督の初長編劇映画。別邦題に「罪と罰 白夜のラスコーリニコフ」。フィンランド。94分。
感想
食肉処理場で働く若い男が主人公だ。実業家の男を殺害して物語が始まる。優秀だが貧しい男が見知らぬ金持ちを殺す動機の曖昧な事件かと思っていたら、両者の間にはがっつりと因縁があって拍子抜けした。
それからの男の行動は不審に満ちている。目撃者を見つけて名前と住所を教え、警察に通報するように頼んだり、刑事に尋問されて汗だくになりながらも挑発するようなことを言ったりする。さらには別人を犯人に仕立てるような工作もしている。
捕まりたいのだか捕まりたくないのだかよく分からないが、警察をおちょくりたかったのだろう。殺した男と同じように罪を犯しながらも証拠不十分で無罪になることを狙っている。
だが目撃者の若い女と何度も会うようになり、彼の心境に変化が見えるようになった。そして、うまくコントロール出来ているように思えた捜査の進捗状況も、想定外の出来事によって思い通りではなくなった。それらが彼を自首に向かわせたのだろう。罪の意識よりも計画が狂って自棄になったことが大きな要因のように思えた。
すんでのところで自首を一旦思い止まった主人公の背中を押したのが、目撃者の女の存在だったというのはグッと来るところだ。逃げるのではなく、罪を償うモチベーションとなった。
ラストの、彼女との面会で自分が間違っていたことを認める彼の言葉も良い。原作は読んでおらず、どれくらい忠実なのか分からないが、ちゃんと読んでみたくなった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 アキ・カウリスマキ
製作 ミカ・カウリスマキ
出演 マルック・トイッカ/アイノ・セッポ/エスコ・ニッカリ/ハンヌ・ローリー/オッリ・トゥオミネン/マッティ・ペロンパー
音楽 ドミートリイ・ショスタコーヴィチ