★★★★☆
あらすじ
骨董品をめぐって騙し騙された二人がコンビを組み、大掛かりな詐欺を仕掛ける。
感想
序盤の骨董品買取に飛び込みでやって来た中井貴一演じる古美術商の男を、怪訝な目で品定めする佐々木蔵之介の細かい演技が上手くて面白かった。警戒心をあらわに、時々相手の顔をじっと盗み見るようにしながら用心深く用件を聞いている。怪しげな人と話をするときは確かに人はこんな感じになる。ただ後で彼も詐欺師だったという事が分かると、あれは無駄に迫真過ぎたかもと思わなくもないが、こいつは騙せるだろうかと値踏みしていたと考えれば辻褄は合う。
やがて古美術商は、佐々木蔵之介演じる贋作師に騙されたことに気づき、怒鳴り込みに行く。ただし、彼は彼で騙そうとしていたことがバレているので、強く出る事は出来ない。そこまでは分かるのだが、なぜ彼はここから贋作師にしつこく付きまとい、彼の家に居座り続けるようになったのかはよく分からなかった。金を返せと強く迫るわけでもないので、普通なら地団太を踏みながらも、あきらめて捨て台詞でも吐いて去るしかないと思うのだが。何がどうしてなのかは分からないが、関西ぽいといえば関西ぽいかもしれない。
奇妙な同居を続けるうちに共通の敵がいる事を発見し、タッグを組んで大掛かりな詐欺を仕掛けることにした二人。早速準備を始める。ここで重要な役割を果たす贋作の茶碗づくりのシーンが、結構な尺を使って描かれるのだが全然見ていられるのがすごい。やはり熟練の職人技というものは人を惹きつけるのだろう。そう見えるように上手く撮られている。そして準備が整い、いざ本番へ。
緊張感のあるクライマックスの後、作戦が成功して喜びがすぐに爆発するのではなく、しばらくじわじわと広がったあとに喜びが爆発するのがとてもリアルだった。特に奇抜さのないオーソドックスなストーリーではあるが、主演の二人の演技力の高さもあって安心して見ていられる映画だった。
ただクライマックス以降の結婚式のくだりなどは蛇足感がすごくて、盛り上がっていた気分を一気に台無しにしてしまった。詐欺を題材にした映画ではどんでん返しに次ぐどんでん返しが定番ではあるが、こんなのだったら無い方が良かった。テンションだだ下がりでエンドロールを眺めていたら、古美術商の家族がしっかり描かれていなかったからその関係性がよく分からないなとか、そういえばピンクのイルカのくだりは結局最後まで説明がなかったなとか、気づかなくてよかったマイナス面にたくさん気づいてしまって困った。
スタッフ/キャスト
監督 武正晴
脚本 足立紳/今井雅子
出演
佐々木蔵之介/友近/森川葵/前野朋哉/堀内敬子/坂田利夫/木下ほうか/塚地武雅/桂雀々/寺田農/芦屋小雁/近藤正臣/(声)浜村淳
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