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「D坂の殺人事件」 1998

D坂の殺人事件

★★★★☆

 

あらすじ

 昭和初期。裏の仕事で贋作を行なう美術品修復屋の男は、贋作完成後に依頼者の女を殺してしまう。

 

感想

 幼い頃に子供向けの江戸川乱歩作品を何冊か読んだことがあるくらいだが、あの独特のなんとも言えない怪しい空気感を上手く表現している映画だ。陰影の深い映像に凝った構図、シュールな奇妙さがある演出と、独特の世界観が見事に構築されている。

 

 そんな映像世界に魅せられて忘れてしまっていたが、タイトルにあるような殺人事件はなかなか起きない。映画の半ばを過ぎ、しばらくしてからようやく起きる。もしかしてタイトルに反して殺人事件が起きないシュールすぎるやつ?と不安になり始めていたので少し安心した。さすがにそれだと不条理過ぎて、ついて行けない。

 

 この映画を見ていると、江戸川乱歩の世界がなぜ怪しく感じるのかが分かるような気がした。登場する古書や骨董古美術の世界はマニアックな世界だし、贋作や性的倒錯も一つのことに没頭するものだ。つまりカルトな世界が多く描き出されている。

 

 

 普通の人なら気づかないようなわずかな点に気づき、何やら興奮しニヤニヤしてしまっている人たちはやはり奇異に映る。とどまることを知らない執着心や欲望を垣間見てしまったような気になるし、常人には理解できない領域にいるのだなと畏怖すら感じる。人知れずそんなカルトな世界に熱中する人びとがたくさん登場するから、そこにおどろおどろしさを感じてしまうのだろう。

 

 終盤になってようやく犯人と探偵・明智小五郎が対峙する。一回限りの僅かな時間ではあったが、そのやり取りには見ごたえがあり、満足感があった。明かされる犯人の動機も、それを聞いただけではなんだそれ?と思ってしまいそうなのだが、それまでの長い前振りがよく効いていて、素直に納得できてしまった。マニアックな人ならあり得るな、と。

 

スタッフ/キャスト

監督 実相寺昭雄

 

原作 「D坂の殺人事件」/「心理試験」

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出演 真田広之/嶋田久作/吉行由実/大家由祐子/岸部一徳/六平直政/齋藤聡介/小川はるみ/三輪ひとみ/寺田農/堀内正美/東野英心/広瀬昌亮/岡野進一郎/原知佐子

 

D坂の殺人事件 - Wikipedia

D坂の殺人事件(1997)(R15+) | 映画 | 無料動画GYAO!

 

 

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