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「ホワイトラビット」 2017

ホワイトラビット(新潮文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 仙台市で起きた奇妙な立て籠もり事件の顛末。 

 

感想

 ある男を探して家に侵入した犯人。犯人は妻を誘拐されて脅されており、押し入った家の母と息子も何やら隠し事があるようだ。さらにはそこに謎の男も加わって、というややこしい展開。そこから立てこもり事件へと続いていくのだが、なんとなく引っ掛かりを感じる描写があちこちに散らばっている。

 

 冒頭や本文の中で何度も「レ・ミゼラブル」に言及していることからも、それを意識しているのだろう文章で描かれていて、どことなくとぼけた雰囲気がある。実際に「レ・ミゼラブル」をちゃんと読んだことはないのだが、何となくわかる。この文章が多少は読者をかく乱するような役割を果たしているのだろう。中盤はどことなくぎこちない雰囲気を漂わせている。

 

 

 そして終盤、事件の真相が明らかになり、中盤に感じていたぎこちなさの正体が知らされる。ただ、この事件の真相を明らかにしていく過程が、回りくどいというか結局ややこしくて、そうだったのか!と膝を打つような痛快さはなかった。どことなく説明もだらだらとしていて冗長で、くどさがある。渋々納得させられたようなモヤモヤ感があった。

 

 そんな立て籠もり事件が終わって物語も終了かと思っていたら、まだその先があった。正義とは何か、という重いテーマを突き付けられる。気楽に読める犯罪小説かと思っていたので多少面食らった。このどこか生真面目さを感じる部分が伊坂作品らしいところではある。

 

 冒頭でしていたギリシャ神話の中の、恋人が騙されてオリオンを殺してしまったというエピソードの伏線回収は、物語の中で一番気持ち良かった。明確な理由はないけどそんなの分かる、というのが良い。

 

著者

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ホワイトラビット(新潮文庫)

ホワイトラビット(新潮文庫)

 

 

 

登場する作品

レ・ミゼラブル〈1〉 (ちくま文庫)

平家物語(上) (角川ソフィア文庫)

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白昼の死角 (光文社文庫)

青の時代 (新潮文庫)

新版 古事記 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

 

 

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