★★★★☆
あらすじ
無人島に呼び寄せられた様々な経歴を持つ10人が、次々と殺されていく。
感想
様々な理由をつけて無人島に集められた10人の男女。最初は各人物の把握が大変だが、まんべんなく程よく紹介されていくのでそこまで苦労はしない。
集められた10人が予言通りに何者かに殺されていく。彼らが殺される理由も述べられながらテンポよく死んでいくので、正直、犯人探しをするというよりも次はどうなるのかという興味の方が強く、どんどんと読み進めてしまう。
そしてこんな奇妙な設定であるにもかかわらず、物語の進行にほとんど不自然さや無理を感じさせないのがすごい。人々がこれは連続殺人だと気づき、犯人探しをしたり、互いに疑心暗鬼になったり、さもありなんという行動だ。
ただ敢えて言うならば「十人の小さな兵隊さん」という詩になぞらえて一人ずつ殺されていっているのだから、もうちょっとこの詩を気にかけろよ、とは思わなくもない。詩を読めば次にどんな殺され方をするのかは、ある程度想像がつくはずなのだから。ただ、実際に「詩にヒントがある」とか真面目な顔してやっていたら、推理小説の読みすぎと言われてしまいそうだが。
最終的に全員が死んでしまうまで犯人が全く明らかにされないという構成もうまい。タイトル通り、そして誰もいなくなった…という感じがよく出ている。駄目な推理小説だと真相が明らかになると逆に穴だらけでがっかりしてしまうこともあるが、ちゃんと納得できる種明かしだった。最後の一人の殺人方法がちょっとどうかな、と思わないでもないが、上手くいかなかった場合でもまだ別の手段をとれたはずなので、納得できる。古さを感じさせず、長い間読み継がれているの納得の作品だ。
ところで、本書の冒頭には著者の孫による序文が寄せられているのだが、そこで小説の大体のあらましが述べられていて、読む前はあまり事前情報を入れたくない自分としては、いきなりかなりがっかりさせられてしまった。有名な古い作品だから、読んだことがなくても大体の筋は皆知っているでしょうということなのかもしれないが、出来れば巻末にしてほしかった。それでも楽しめたのだからやはりすごいのではあるが。
著者
アガサ・クリスティー
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